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「仲好しだね、あのふたり。ギルワさまの夜食つくるのの手伝いよ。ターカック嬢にかりてた本を全然読んでなくて、明日その話になったらどうしようって、慌てて詰め込んでんの。かりたらすぐに読んどけって話よ。しかも、簡単な単語の綴りが解んなくて、エイジャに泣きついてたわ。あいつ絶対、実技の成績だけで入山してる」
「ギルワさま沢山食べるから、大変だったでしょ」
「二十個くらいたまご割った。半分は握り潰したかも。火加減とか、水加減とか、ほんとにうんざりする」
ランスさんはお料理が苦手みたいで、いやそうに溜め息を吐く。今日俺達は、帝国寮の厨房へ派遣される予定だ。
サキくんとした約束だけれど、まだ果たせていなかった。仕事仕事で、ゆっくりできる時間はほとんどないし、単独行動は禁じられているので、サキくんをさがしに行くこともできない。ついでに、俺とメイリィさんは、成る丈人目につかない仕事にまわされ続けていた。だから、連邦共和国寮の広間や、学舎の広間で、給仕のついでにサキくんを見付ける、というのも、不可能だ。
サフェくんが駈け込んできて、お膳をうけとり、俺の隣へ座った。昨日から、サフェくんの髪は短い。
奉公人の男性に、髪が短いひとが多い理由は、三日目くらいで解った。幾ら魔法があったって、洗って乾かすのに時間がかかるからだ。奉公人の仕事は地味だけどつらいので、汗をたっぷりかく。だからお風呂は絶対はいりたい。でも髪を乾かすのが面倒。となれば、切るしかない。
「おはよ」
「おはよう。サフェくん、今日は宜しく」
「うん。あ、おはよ、ワウラ、ルクト」
「おはよー」
ワウラさんとルクトくんも、俺達のテーブルについた。ルクトくんも髪が短くなっている。女性が髪を短くすると、結婚したいです! みたいにとられかねないらしいので、女性陣は逆に髪が長いままだ。男性と違って、多少雑に扱っていても眉をひそめられることはないので、半乾きで寝ちゃったりしても誰にも咎められないのだろう。男のひとが髪を雑に扱ってると、人格に問題があると思われるみたいだからな。
サフェくんはコーンポリッジにはちみつを多めに注ぎいれ、かきこんだ。御山の敷地内(くわしくどこかは知らない)で養蜂をしているそうで、はちみつはばんばんつかっても怒られない。
「今日は、アーシェとヴィオウサ以外、新入りはみんな帝国だよね」
「そ。ルクトとマオが料理するんだよね?」
「です」
「ディロが楽しみだって、昨夜煩かった」
「えー、期待されても、そこまで豪華なものは出ないよ。ねえ、ルクトくん」
「帝国は朝から結構食べるし、贅沢にしちゃいましょうか。あ、そうだ、サフェとワウラは器用だから、汁ものくらいしてもらおうかと思ってるんだけど。マオ、どうかな」
頷いた。「ルクトくんに賛成」




