表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2215/6875

2103


 さんざっぱらお昼ご飯を食べたのに、見ているだけでおなかがすいてきた。ローストビーフ、ビーフシチュー、ステーキ。あとは、ハム、腸詰め、ベーコンなどの豚加工品も。鳥肉もちらほら。

 あ、そうだ。


 神聖公国寮の広間は、白っぽくて明るい空間だった。テーブルには白くて、縁に黄色でぬいとりがされているクロスが、丁寧に掛けられている。椅子は背凭れにもクッション性があるもの。

 その椅子に、ケルネスさまはふんぞりかえっていた。脚を組んで腕も組んで、相当に不満げな顔だ。ほかの学生達もぽつぽつ戻ってきているそうだが、皆湯をつかってから社交室へ行くので、まだこちらには寄りつかない、とのこと。

 俺はできあがったお料理をのせたお膳を、恭しく運んでいった。つくったやつに運ばせろと仰せだったのだ。

 ぴくっとケルネスさまの眉が動く。その前にお膳をおくと、おお、と感嘆の声をもらした。

 トレイにのっているのは、五種類。

 小振りでまんまるな、かりっとした表面がおいしいパン。

 ふかしたじゃがいもにバターの塊をのせただけのもの。

 ジャムを煮詰めて多めのゼラチンでかため、糖衣をまぶした、やわらかいグミのようなかたいゼリーのようなお菓子。

 切り刻んだお野菜がたっぷりはいった、牛ストックのスープ。

 そして、()()()()とあさり、かきのりんご酒むし、パセリバターぞえ。


 ケルネスさまは脚も腕も解き、小さく食前のお祈りをする。すっと優雅にナイフとフォークをとる。

 簡単なことだった。この若さまは、お魚を食べたかったのだ。

「若さまのお母上さまは、オーウェンダルト家のご出身だとか。オーウェンダルト領は貝の産地として名高いと聴きました」

「お前、俺の母の生家まで覚えているのか」

「勿論です」

 にっこりした。まあ、覚えてたけどさ、オーウェンダルトが貝の名産地っていうのは、あれだよ。俺がりんご酒むしをつくりはじめたら、料理人のひとりがそう云ってたからってだけ。

 ああ、お魚と貝は、ここの厨房にはなくて、一般寮から持ってきてもらった。魚食が盛んな小国から来ている子が居て、そっちには沢山ストックされていたのだ。毎日海産物の商会から買うんだって。莫大なお金がかかると思うんだけど、学生に衣食住で不足があってはならないってのが御山(おんやま)の考えかたらしい。パフォーマンスが落ちるから、勉強や研究にも響くってこと。

 ケルネスさまは、器用にかきをからから外し、バターをたっぷりつけて、口へ運んだ。ぱっと表情が明るくなる。笑うと歳相応の、可愛い顔になる。

「旨い。久し振りにまともな食事になりそうだ。ありがとう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ