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まずはお掃除。俺とメイリィさん、エイジャさんが、その部屋を担当した。残りは別の部屋へ移動する。
ここは、社交室、なんだそうだ。よく見れば、ソファやローテーブルもあるし、本棚が幾つかあって、本やボードゲームが置いてある。投扇興みたいなやつのセットもあった。
「社交室は、帝国寮にはみっつあって、ここは一階。あとは二階と、地下。一般寮には地下がないんだけど、ほかの寮にはある。あ、教員寮にもないかな」
エイジャさんは腰をいれて、デッキブラシで床をこすりながら、そう説明してくれた。「ないっていうか、あるんだけど、普通入山者は近寄らない。掃除道具が置いてあったり、食料庫になってたりだから。ここと、神聖公国寮、連邦共和国寮には、地下に学生でも這入ってくるから、気を付けて」
やたらと注意喚起されるが、学生ってそんなにおそろしいものなのだろうか。
メイリィさんが無言で頷いたので、俺もそうする。俺達は、エイジャさん同様、必死に床を磨いている。
こっちの世界って、屋内でも土足じゃん? 床掃除ほんとに大変。簡単に雑巾掛けしたくらいじゃどうにもならないと思う。
床には、錬金術士の先生がつくったというお薬をまいてある。洗浄剤だ。お水でうすめてまき、こうやってデッキブラシ(やたら短い猪毛が植えてある)でこすり、最後は雑巾で拭き上げればいいそうだ。
俺達の動きは悪くなかったのか、エイジャさんは頷いて、脚立にのぼった。ちなみに、掃除道具はエイジャさんが持ってきていた。収納空間で。
エイジャさんは、床を掃除するよりももっとうすめたお薬のはいったばけつを持ち、雑巾を浸して、壁を拭いている。うすめる為のお水は、俺が提供した。試験でゲットしたやつだ。
ピアノの下を磨く。水分が影響しないのか、と思ったが、エイジャさんからなにも云われていないし、大丈夫なのだろう。
「この社交室が一番人気ないんだ。今の時間なら、学生は授業の筈だし、誰も近寄らない。安全に出てこられる。あ、もう充分だから、雑巾で拭いて」
「はい」
メイリィさんと声が揃った。
社交室はひろい。そこを、ふたりで雑巾掛けだ。尋常じゃなく体力をつかう。
エイジャさんはしかし、手際がよくて、さっさかさっさか壁を拭き、デッキブラシより長い棒の先に雑巾をとりつけて、天井も拭き始める。天井を何ブロックかに分けていて、脚立を移動させながら隅々まで拭いていった。俺達が床に悪戦苦闘している間に、壁も天井も綺麗になっている。




