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ていうか、あの山道を三往復って、殺す気か。体力高いひとを選抜してるんだろうけれど、用捨ないな御山。
ストリイ先生はサフェくんを気にいったのか、じっと見詰めている。「君達、どこに配属されるかはまだ決まっていない?」
「はい」
怯え気味にサフェくんが返した。ストリイ先生はにっこりする。
「そうか。じゃあ、僕は下まで走らなくちゃいけないから。また会えるといいね、サフェ。マオ、あなたにも」
ストリイ先生はにこにこ顔で走り出ていった。感じがいいひとだなあ。
「な、なんか、こわいかも、今の先生」
ストリイ先生が出ていって、暫くすると、サフェくんが涙目で云った。サラダを堪能していた俺は、顔をあげる。「なにが?」
「マオって……」
ランスさんが肩をすくめた。何故。
サフェくんは猛烈な勢いで口に食べものを詰め込んでいる。先生と話して、気疲れしたのかなあ。
ご飯をたっぷり食べた後、奉公人だけのお楽しみだというお菓子をもらった。レーズンが山盛りはいったベイクドチーズケーキだ。とんでもなく旨かった。
「楽しそうだね」
ジアー先生が這入ってくる。チーズケーキを食べていた俺達は、立ってそれを迎えた。ジアー先生の後ろからアロさんがあらわれ、微笑みながら俺達に羊皮紙を配る。渡された紙には、一番上に「マオ・クニタチ」とあって、その下に日付・時間と場所、業務内容が書いてあった。
ジアー先生が云った。
「君達ははいったばかりだし、それぞれの適性はある程度解っているけれど、これから半月は幾つかの場所で働いてもらう。ああ勿論、体力の低いアーシェ達は、力仕事にはまわさない。その点は安心してくれ」
「はい、先生」
ジアー先生は頷いて、アーチを示す。「あちらから、図書館、一般寮、連邦共和国寮。こちらが神聖公国寮、帝国寮、学舎に通じている。覚えるように」
把握した。
「明日は、そこにも書いてあるけれど、帝国寮と神聖公国寮へ行ってもらいます。そちらで、掃除と洗濯をしてもらう。君達だけでやる訳ではないから、解らないことがあれば彼らに訊くように」
ジアー先生がアロさんを指さし、アロさんはにこっとして頷く。やっぱり、いい職場だなあ。
ジアー先生は俺達のテーブルに合流し、ご飯を食べた。チーズケーキは先生も大好きだそう。奉公人だけのお楽しみだと、ファラワさんは云っていたけれど、ジアー先生は特別みたいで、供されていた。
「気苦労は多いだろうけれど、忍耐強く仕事にあたってほしい。ガロア先生が、君達には特に期待していてね」
アロさんがくすくす笑った。




