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「ああ、あなたがマオ?」
男のひとはこちらへ手を出す。握手と云うことだろう。俺も手を出すと、結構な力で掴まれた。そのままぶんぶん上下させている。
「僕、ストリイ・ロンコット。実技の補助教官です」
「どうも……」
上下動は終わったが、手をはなしてもらえない。ストリイ先生は、二十歳を幾らか過ぎたくらいの、濃い金髪の男性だ。
癖の強い髪は短く切っている。ピアスがじゃらじゃら揺れていた。瞳は濃い緑で、睫毛がふっさりしている。眉が一部切れていたり、首にうっすら傷痕があったり、いかにも前衛職という感じ。
顔立ちにはまだ幼さが残っていて、笑うとそれが強調される。
「いやあ、セロベル先生、やっぱり美人が好きなんだなあ。マオ、宜しく。なにかあったら云ってください。僕、ある程度なら力になれますから」
「はあ。どうも、ありがとうございます」
俺はなんとなく、頭を下げた。やっぱりセロベルさんって面喰いだよね? だってリエナさんも美人だもん。
ぱっと手がはなれ、ストリイ先生は俺にぱちっと片目を瞑ってから、私兵達のテーブルにまざった。
「なに、あれ」
ランスさん達がゆっくり、席に着く。俺も座った。そのままマドレーヌに手を伸ばし、口へ運ぶ。
「マオ、手、洗ってきなさいよ」
「え? 大丈夫だよ」
ランスさんは口を尖らせている。ワウラさんは苦笑だ。「マオって、気が強いんだ」
「なにがですか?」
「なんだかよく解らないじゃない、あいつ。あんたに対してさ。毒でも塗りつけられたかもよ。惚れ薬とか」
「そんなものあるの?」
「あるでしょ。御山なんだし」
そうなのかあ。ほーじくん、大丈夫かなあ。
まあ、俺は大丈夫だけどな。状態異常無効だもの。
私兵達とストリイ先生は、超特急でご飯を食べ、お風呂へ向かった。いれかわりで、一際汚れていたふたりが、さっぱり綺麗になって戻ってくる。そのふたりはご飯を食べ、アーチのひとつから出ていった。
「なんなんだと思う?」
「見当もつかない。ここで寝起きしている訳じゃないんだね、彼らは」
ディロさんが云い、アーシェさんが応じた。俺達も、意見はない。実際のところ、見当がつかないからだ。
ファラワさんが出てきた。「みんな、ご飯食べる?」
「はい!」
俺とサフェくんは元気よく返事した。さっき、私兵達が食べていたご飯が、それはもうおいしそうだったので、おなかがすいていたのだ。
ファラワさんはにこっとしてひっこみ、ランスさんがぼやいた。「あんた達って食欲しかない訳?」




