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こういうねまわしが、人間関係の構築には必要だと思う。要するに食べもので釣るのだ。俺なら一発で親友認定する。
「あ、いい匂い」
「お茶してるの?」
数人、玄関ホールから這入ってきた。ほとんど男性だ。「わ、新入りさん達?」
「そう。この子がお菓子くれたんだよ」
「おいしそー」
皆さん、声も動作も小さい。表情はうすかった。俺はお皿を示す。
「まだまだ沢山ありますから、皆さんもどうぞ」
先輩達は目を交わし、微笑んだ。
アーシェさん達が話していた通り、奉公人には髪の短い男性が多かった。
別のテーブルについた先輩達に、大皿に盛ったお菓子を献上する。先輩達はお礼を云いながらそれをうけとり、テーブルに置いて、低声でお喋りしながら食べはじめた。仕事が済んだら別の仕事をさせられる、と聴いていたが、お茶休憩はゆるされているのだろうか。
ファラワさんが、三角巾をかぶり、エプロンを着けた状態で、厨房から出てきた。手には、羊皮紙が複数枚握られている。
俺達のテーブルに、羊皮紙が置かれた。羊皮紙には、上のほうとまんなかに、小さく文字が書いてある。ファラワさんがそれを示した。
「あのね、これ……厨房で、みんなの食べられないものとか、好きなものを管理することになってて、書いておいてほしいんだ。こっちが食べられないもので、こっちが好きなものね。あ、字が書けなかったら、僕がかわりに書くから」
ファラワさんはそう云って、どこからか、インクとペンを持ってきた。俺達は指示の通り、食べものの名前を書いていく。アレルギー対策なのかもしれない。いいことだと思う。俺は食べられないものの欄に、なにも書かなかったけどな。
実際、毒でも平気だと思う。状態異常無効だから。
意外にもワウラさんが、文字を書くのが苦手だそうで、一部ファラワさんに代筆してもらっていた。もしかしたら、こういうのも狙いかもな。
奉公人同士は助け合う。だから、それぞれなにが得意でなにが苦手か、把握しておく為、とか。
「じゃあ、……あ、もし食べられないものが増えたり、好きなものが増えたり、その逆でも、云ってもらえれば修正するから。えと、お疲れさま。晩ご飯、おいしいものつくるからね」
ファラワさんは微笑んで、俺達が書いた書類を抱え、厨房へ戻っていった。ランスさんがその後ろ姿を目で追う。「なんか、物腰が凄くやわらかい」
「ね……」
ディロさんがちょっと呆れたみたいに返した時、扉が開いて、武装した集団が這入ってきた。




