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部屋でやることもないし、俺達は広間へ向かった。女性陣もそうだったみたいで、みんな椅子に腰掛け、所在なげにしている。
「ひまみたいだね」
「そっちも?」
アーシェさんが声をかけると、ディロさんがくすっとした。「片付けなんてすぐだった。荷物解いておしまいだもの」
同じテーブルについた。皆さんちょっとずつ言葉を交わすが、ぎこちない。会話は途切れ々々だ。初めての場所だし、ここでのルールもよく解らない。なんとはなし、不安がある。
ファラワさんは、やっぱり俺達が気になるらしく、奥にある扉の向こうから頻繁に出てくる。どうやら、そこは厨房のようだ。
「どうぞ」
ひとのお世話をするのが好きなのかな? ファラワさんは、俺達にお茶を持ってきてくれた。
ちょっと背の高い、おしゃれなマグで、彫金のお匙がついている。下では高級品のはちみつが、大きめのつぼで供された。
「ありがとうございます」
結局、なにを話すでもなく、ただぼーっとしていた俺達は、姿勢をただしてファラワさんへお礼を云った。ファラワさんは含羞んで、お盆で顔を隠す。
「たいしたものじゃないから……おなかすいてたら、云ってね」
「はい」
「あの、ファラワさん」
「うん」
ファラワさんがこちらを見た。このひとは髪が短い。厨房担当みたいだから、清潔にしておく為かもしれない。魔法で乾かすことを考えたって、短いほうが断然はやい。それに、三角巾できっちり覆ってしまえば、事故も少なそうだ。
俺は収納空間の口を、ちょこっと開いた。「あの、食べもの持ってきてるんですけど、食べてもいいですか? お菓子」
「あ、うん、だいじょうぶ。そういうものの持ち込みは自由だから」困ったみたいな微笑みが返ってきた。「お皿、要る?」
「持ってきてます」
ファラワさんは小首を傾げた。
大皿を出して、その上に焼き菓子類を盛った。クッキー、ビスケット、焼きメレンゲ、マドレーヌ、パン・ド・ジェーヌ、パウンドケーキ、ウーブリー、などなど。
お菓子とお茶があれば、場は和むし口も滑らかになる。俺達はのみくいしながら、他愛もないことを喋った。食べものの持ち込みが自由、とか、先輩が優しい、とかで、不安もだいぶ軽減されている。
「あの、マオ」
厨房から、ファラワさんが出てきた。にこっと笑うが、眉がちょっと困った形のままだ。そういう顔立ちらしい。
「お菓子、おいしい。ありがとね。みんな喜んでる」
「よかったです」
厨房の皆さんでどうぞと、ファラワさんにもお菓子を預けていたのだ。喜んでもらえたのならよかった。




