2080
ジアー先生はアロさんと出ていった。ファラワさんという奉公人が、ジアー先生に俺達のことを託されていた。困った顔で、布巾を揉みしぼっている。
「ええっと……もう少ししたら、配属先が解るから、それまでここで休んでいて。働くのは明日からだし……あ、そうだ、鍵を渡すから、お部屋の片付けでもしていて」
困った眉のまま微笑んで、ファラワさんは壁につくりつけの戸棚へ駈けていく。なかから鍵束をとりだして、鍵を幾つかぬく。ファラワさんは俺達の部屋を把握していて、迷うことなく鍵を渡してくれた。
「じゃ、僕はご飯の仕込みがあるから。じゃあね」
にこっとして、ファラワさんは居なくなった。俺達は目を交わし、鍵を見る。
「……片付け、しよっか?」
「そうね」
突っ立って待っているのも落ち着かないので、俺達は再びふたてに分かれ、部屋へ向かった。
先程はジアー先生が居たので、私語はなかったのだが、今度はお喋りしながら歩いた。
「髪、短いひとが多いですね」
「ああ、そうだねえ」
ルクトくんが云い、アーシェさんが応じる。そういえばそうだ。俺は髪の長い男のひとのほうが気になるので、短いことは見逃していた。
「女のひと、少ないし」
「慥かに偏ってたね」
「結婚して辞めるひとが多いんじゃないかな」
あ、そういうのもあるのかな。うーん。
錠を外し、部屋に這入った。やることは特にない。収納しているほうが便利で楽だし、無駄も少ない。衣装戸棚の出番はないだろう。
ひとつだけ、寒そうだったので、毛布を二枚出してベッドにかけておいた。うすいかけ布団だけだったのだ。暑かったら脱いだらいいし。
お風呂ってあるのかなあ、と不安になっていると、ノックの音がした。サフェくんだ。俺は廊下へ出る。
「先生、戻ってきた?」
「ううん。ファラワさんが、お手洗いと風呂の場所教えてくれるって」
「おお、助かる」
ファラワさんは困ったみたいな微笑みで、廊下の端にあるお風呂場まで案内してくれた。お風呂の隣がトイレだ。
お風呂はふたつあって、俺とメイリィさんは向かって右、それ以外は向かって左をつかうように注意される。またしても謎の区分だが、そう云われたらそうするしかない。
お風呂は、這入ると洗面所で、洗面台が幾つか並んでいた。排水設備は完璧だ。ネームタグのついた籐かごの並んだ棚があって、きがえや汚れものはそこへ置く。洗濯に関しては、洗滌人である奉公人がやってくれるので、かごにいれておけば間違いない。
「洗滌人じゃなくても、洗濯場に配属されることもあるからね」
ファラワさんは困った顔でそう云っていた。




