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御山は、山道から這入って割とすぐの位置に、学舎と教員寮がある。教員寮と云っても、学舎内に研究室を持つ先生は、研究室で寝起きするのが普通だそう。
南側にはいびつな円筒の図書館。とりあえずは立ち入り禁止だと云われ、がっくりきた。でも、配属される先が決まれば、場合によっては這入っていいんだって。
ジアー先生は、ちょっと左へ進路をとり、俺達はそれを追う。木立や生け垣、花壇が沢山あって、目に鮮やかだ。
学舎をぐるっとまわりこむようにすすみ、噴水の前に出た。ベンチやテーブルなんかが設置されている。ここは、噴水広場と呼ばれていて、学生達の憩いの場だそうだ。
生け垣と木立に遮られて、それより西がよく見えない。よっつ、小径があって、それらは各寮へ通じているらしい。ただし、かなり長い道のりだし、今は案内しない。迷ったら出られなくなるので、ひとりでは這入らないこと。そう注意される。
北へ向かう。声が響いてきた。森をぬけ、俺達は、ちょっと離れた高いところから、戦闘訓練を見学した。御山の制服を着た子達が、魔法をつかったり、剣と剣を打ち合わせたりしている。ランスさんやサフェくん、ルクトくんの目が羨ましそうな色を帯びたのは、俺の勘違いではないだろう。
そこから西へ行くと、湖があるらしい。水泳の訓練なんかにつかわれるもので、近場に毒草が生えたらことなので、奉公人達は毎日そこの草むしりに精を出しているそうだ。
急ぎ足の案内のあと、ジアー先生は俺達を噴水広場につれていき、小径ではなく木立の間に這入っていった。俺達はそれを追う。
「不思議に思いませんでしたか? あなた達の暮らすところがないでしょう」
あ、ほんとだ。学舎とか、教員寮、それから学生寮(実際見てはいないけれど)は説明されたが、奉公人用の寮は見ていないし説明されていない。
ジアー先生は木立のなかでたちどまる。ちょっとだけ拓けたところだ。ジアー先生が地面に触れると、ぱかっと一部がせり上がった。
扉だ。懐かしの隠し扉だ!
ジアー先生は開いた穴に、ぴょんと飛び込んだ。俺達もおずおずと続く。俺は最後に飛び込み、足をくじきそうになった。だって、2mくらいあるんだもん。
穴のなかは明るくて、清潔だった。じめじめもしていない。白っぽい灰色の石で壁も床もできていて、ところどころに灯がとりつけられていた。ジアー先生が壁の一部を触ると、隠し扉が閉まる。
「では、行きましょう。あなた達の部屋はこっちです」




