2074
階段の横幅はせまい。三人並んでのぼれるかな、くらい。一段々々の幅もせまい。傾斜はなかなかのものだ。まったく嬉しくない。
シシース先生はなにも云わず、なんでもないみたいにひょいひょいとのぼっていく。しかも、二段飛ばしで。長いローブの裾を踏みそうなものだが、シシース先生はそんな間のぬけたことはしなかった。
俺達も、それに追いつこうと、あしを動かす。かなり上のほうから、シシース先生の声がした。
「この階段は、山道と呼ばれる。成る丈御山を損なわないように、もともとあった溝やくぼみをもとにして彫られている。だから、大雨や嵐の後には、ここに土砂が溜まるし、雪も吹きだまる。それを掃除するのも君らの役目だ。崩れた段を修繕する仕事もあるかもしれない」
ひええ。めちゃくちゃ重労働じゃん。つらい。
しかし、ランスさんやワウラさん、ほかにも半数以上は平然としてはいと返事していた。体力高い組だ。羨ましい。
先生の云う通り、階段はカーヴしていたり、平たいところに出たと思ったら横に移動していってまた階段、なんてことがあった。もともとあった道を利用しているのなら、それは当然だろうと思う。人間が扱いやすいようにできた山なんてない。
暫くすると、体力の差が如実にあらわれてきた。アーシェさん、サフェくんなどが後ろのひとに追い抜かれ、俺の傍までさがってきてしまったのだ。
勿論俺は、太腿の筋肉痛がすでに始まるくらいあしを酷使していて、それはもうつらい。だから、遅れはじめたひと達に、なにかはげましの言葉をかけることすらままならない。
前のグループとの差はそこからも徐々に徐々に大きくなり、何度目かの角で、ついに先を行くひと達の姿が見えなくなった。
「まずい」サフェくんは息絶え絶えだ。「おいてかれちゃう」
「恢復魔法持ってるひと、居ない?」
「つかえるけど今は無理だよお」
俺は会話に参加する気力もなかった。汗だくだし、息が苦しいし、咽が痛い。その上、何故だか四肢が不気味に震えはじめた。これって、低血糖かも。もしくは、高山病?
そういえば御山って、もの凄く高い山じゃん。高山病は大丈夫なのかな。
サフェくんが転んだ。階段を掴んで、ずり落ちるのを阻止している。アーシェさんがサフェくんの腕を掴み、俺が腰の辺りをおして、立ち上がる補助をする。「ごめん、先に行って」
「だめだよ」声が出た。「助け合わなくちゃ」
「そうね」
のろのろと声のほうを見る。ランスさんとワウラさんが見えた。「ほら、負ぶってあげるよ、サフェ」




