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一の門は、威容、だった。
豪華に飾られている訳ではない。金属だとか、装飾はない。そうではなくて、岩をそのまま削り出したみたいな、なんというか……圧倒される姿なのだ。
幅は、6mくらい……かな。高さは10mと少し。岩がそのまま、門になっている。こちらにも扉はない。どうやって削ったんだろう。崩れ落ちてきそうなものだけれど。
一の門を仰いで口をぽかんとさせる俺達に、シシース先生は静かに云った。
「これは、誰かに手になるものではない。開拓者がこの世界を見付け、御山に降り立った時に、すでに存在していたものだ。そしてここを、御山の目印にした。それから今に至るまで、手をいれた者はひとりたりともない。おそれおおくてそんなことはできないし、試みたばか者は居たけれど、天罰で死んだ。だから君達も、一の門には決して触れないよう。掃除がゆるされているのも、南の娼妓だけです」
シシース先生は振り返る。目付きが鋭くなっていた。
「年に二度の掃除の時は、南の娼妓達に触れると彼らが穢れてしまうので、絶対に触れないよう。ふざけてでもそんなことをしたら、疎蕩者に庇護されている娼妓を傷付けようとしたかどで、荒れ地おくりになる。それを肝に銘じておきなさい」
はい、と、またしても声が揃う。南の娼妓、すげーじゃん。まじで。どうして娼妓の扱いが悪いのか、解らん。謎すぎる。
更に近寄ると、奥行きというか、厚みもあると解った。これ落ちてきたらほんとに助からないぞ。重さ、どれくらいあるだろう?
シシース先生が軽く頭を下げて門を潜っていった。俺達も同じように、頭を下げた状態で続く。神社で鳥居を潜る時みたいだ。なんとなく、敬虔な気持ちになる。開拓者が目印にした、という由緒正しいものなんだし、ご神体みたいな感覚なのかもしれない。
これだけ晴れているのに、門の下は完全な暗闇で、なにも見えなかった。目を瞑っているのかと勘違いしたくらい。光が差し込んでいてもいいようなものなのに、それがない。だから一層、なにか神秘的なものを感じる。
再び、明るい場所に出る。一瞬門を振り返るが、後ろから見ても同じように、岩を削り出したみたいな、圧倒される姿だった。自然の造形美、というやつか。そこに、人間にはどうにもできない天意みたいなものを感じるというのは、解る。
遅れそうになって、慌ててあしをはやめた。ここでおいていかれたら困る。
が、俺がおそれていたものがあらわれた。思わず、小さく呻く。目の前に階段があった。




