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なんと答えるべきか、逡巡する。云いたくない、で、いいのだろうけれど……親しくなれそうだったのに、ひびがはいらないだろうか。
「なんだっていいでしょ」ランスさんがあっさり云ってのけた。「どんな職業だって、できることはできるんだから。ねえマオ、さっきのやつもうひとつくれない?」
俺の職業に関しての疑問は、皆さん一旦措いておくことにしたようだ。おかわりを求める声はほかからもあがった。
みんな満足するまで食べ、油紙はアーシェさんが還元した。巡らせる者を持っているそうだ。包み紙くらいなら、勝手に還元しても叱られない。まとめて近場でやらなければね。
間もなく、お昼のお祈りの鐘が鳴り始め、二の門の向こうにシシース先生があらわれた。
「ごきげんよう皆さん」
シシース先生はローブを翻して歩いてきた。にこっとするが、セロベルさんにはちょっと冷たい眼差しを注ぐ。「護衛のかた達はここまでです。合格者はついてくるように」
くるっと踵を返し、歩いていく。俺達はあしのはやいシシース先生に、慌ててついていった。二の門を越えて、小走りに。
振り返ると、セロベルさんが軽く手を振ってくれていた。俺は小さく、またね、と云って、手を振りかえす。セロベルさんは口の形でそれが解ったか、ちょっと笑った。
俺達は自然に、二列になって、シシース先生の後ろを歩いていた。きょろきょろと四辺を見ると、今日も、警邏隊や私兵が沢山居る。寧ろ、昨日よりも多いかもしれない。なりすまし対策かな。
最後尾につけた俺は、先頭にシシース先生が振り返りもせずに云う言葉を、なんとか聴きとろうと努力した。二の門から一の門までの、この空間の説明らしい。ここは、御山の山道前、唯一の拓けた、そして傾斜のない空間なのだそうだ。そういえば、歩きやすかった。
もし、不心得者どもが押し寄せても、ここで対処できる。山道はせまいから、一気に雪崩れ込むことはできない。となると、ここに溜まる。そこへ大きな威力の魔法を打ち込めば、それでお仕舞。だそう。
特に、奉公人の仕事に必要な説明とも思えない。なので、先生なりに、俺達の緊張を解そうとしてくれているのだろう。
一の門まで、それなりの距離があった。どこかの商会のものと思しい馬車が溜まっているところがある。シシース先生はちょっとたちどまって、そちらを示した。「あれは、君らの仕事に関わりがあるかもしれないね。学生達が契約し、御山に運びこまれる荷物は、あそこで奉公人がうけとります。収納空間を持っている者は配属される可能性があるので、覚えておきなさい」
はい、と俺達は声を揃えた。




