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戻ってきたセロベルさんの耳がへたった。
「……なに、してんだよ、お前ら」
「お昼ご飯ですよう」
三本目のラップサンドウィッチをかじりながら、そう応じた。セロベルさんは何故か、うー、と唸る。
チキン南蛮を堪能しているのは、俺達だけではない。毎度のことながら、傍に居るひとにまで食糧を配らないと気が済まないのが、俺である。五人に二本ずつ渡した後、ちょっと離れたところに居るひと達に近寄っていって、どうぞどうぞとおしつけてきた。
名前を告げてもいないし、あちらもなのってくれたひとは居ないが、護衛らしいひと達の分まで律儀に配ったのが功を奏したか、捨てられたり突っ返されることはなかった。で、皆さんひと口食べれば、そりゃあチキン南蛮だもの、にっこり笑顔になる。
勿論、材料に関してだけはきちんと説明したので、苦手なものを食べさせられて怒る、ということもない。完璧な融和作戦である。俺だって頭があるのだ。
「セロベルさんも食べます?」
「お前な」
「あのー」
頭を抱えるセロベルさんに、チキン南蛮サンドウィッチをさしだしたところ、別グループから近寄ってきたひとに話しかけられた。ぎりぎり十代と思しい、白っぽい青の髪をみつあみにしている男の子だ。
俺はにっこりする。この子はさっき、あからさまに睨んできたのだが、仲好くしてくれるのならどうでもいい。こちらの世界的にありえない格好をしているのは俺なのだ。第一印象は捨てている。
「なんですか?」
「ありがとうございます。おなかすいてて……おいしかったです。あの、もしかして、料理人ですか?」
勘違いされたらしい。俺は笑顔のまま、ただ頭を振った。男の子は目をぱちぱちさせるが、さっきまでのような嫌悪を含んだ目付きには戻らない。
「あ、そうなんですか。俺、ルクトって云います。料理人で……凄くおいしかったです、ほんとに。もし、同じところに配属されたら、宜しくお願いします」
「マオです。こちらこそ、宜しく」
ルクトくんをきっかけに、合格者達はちょっとずつ近付いて、自己紹介をはじめた。最初は元気よく、ディロさんだ。名前、愛称、職業、それに御山での抱負まで、楽しく喋る。次は三十代っぽい男のひとで、アーシェさん。こちらも、冗談を交えつつの自己紹介だった。ふたりとも感じがいいので、場が和む。
みんな次々になのり、最後が俺だった。「マオです。お料理が得意かな。お洗濯とか、お皿洗いも好きです。宜しく」
「マオも家政職?」
直前のメイリィさんが家政職だと云っていた。やはり、髪の短い男はどうにも存在が不気味なようで、皆さん興味深げにこちらを見ている。
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