2064
で、色々あったみたいだが、俺が救出されたと聴いて、ふたりともロアへ戻ったそう。
「御山でも気を付けろよ。こっちだと、クニタチみたいなのは可愛いって人気だからな。俺だって自衛の為に、こんなひげはやしてるんだ」
「うん。気を付ける」
おお、緑珠さんのひげにはそんな理由があったんだあ。でも、手段としては間違ってないだろうなあ。……いや、ひげのひとが好きっていう男のひとも居るだろうし、ビミョーなところかも。
緑珠さんは、お祝いだと云って、全品一割引にしてくれた。買い占めすると、緑珠さんは楽しそうに声をたてて笑っていた。
サローちゃんの工房では、ヴェンゼくんに熱烈に歓迎された。俺の姿を見るや、カウンタから飛び出して、ぎゅっと抱き付いてくる。
「よかったね、マオ」
「ありがと、ヴェンゼくん」
「昨日行きたかったんだけど、忙しくて」
ヴェンゼくんはにこっとする。「マオはこっち。サロー先生がお祝い拵えてるから」
?
ひっぱられるまま、裏庭に出た。ヴェンゼくんは、後の五人に魔力薬なんかの説明をする為に、戻っていった。奉公人は疲れる仕事みたいで、セロベルさんは是が非でも魔力薬は持っていくようにと云っていた。
「おめでとう」
びくついた。サローちゃんと、お弟子さんが三人、籐かごや木箱を持って出てきたのだ。
籐かごも木箱も、ホートリットを解体した台の上に置かれる。台は、綺麗に磨かれていて、血の跡なんてひとつもない。
サローちゃんはひょいひょいと、籐かごから壜をとりだす。
「これが嘔吐剤。こっちは目潰し。これは嗅がせる睡眠薬で、これは服ませる睡眠薬。これは、小さじにいっぱい服めば、体が暫く動かない。この壜は本当に腹がたつやつに服ませて。相手は絶対後悔する」
「さ、サローちゃん、ちょっと?」
サローちゃんは困惑する俺になどかまわず、次々と毒薬を並べていく。毒と云っても色々で、息が苦しくなるもの、体中が痛くなるもの、傷はできないのに出血するもの、おなかをくだすもの、一時的に目が見えなくなるもの、爪がはがれるもの、など、おそろしいラインアップである。
サローちゃんの迫力が凄いので、断り切れず、収納した。お代は無料だそう。お祝い、だって。
勿論、毒薬は少数で、大多数は魔力薬と傷薬だった。一昨日もらったものと同じだ。「こっちも、お代、いいの?」
「勿論」
お弟子さんが、籐かごと木箱を片付ける。魔力薬はまだあるそうで、サローちゃんが運んでくるよう指示していた。




