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メイリィさんは黙りこみ、俺はそれ以上追求するだけの会話能力がなかった。
暫く空を見て、満足したのか、メイリィさんは突然歩き出した。なんとなく追う。辿りついた先はトイレだった。どうやら、はじめから、用足しが目的だったみたい。面白いひとだなあ。
俺もついでに用を足して、メイリィさんと近くの手洗い場で手を洗い、食堂へ戻る。ちょこちょこ話しかけてみるが、メイリィさんは頷くか頭を振るか、首を傾げるだけだ。でも、好きな食べものはなんとか割り出した。ブリニだ。やっぱりシアイル系なのかもしれないな。
食堂は、お客さんはほとんど居なくなり、警邏隊が俺達のテーブルに多数、座っていた。サフェくんはまだまだご飯を食べている。痩せのおおぐいタイプらしい。
席に着く。メイリィさんは、もとの席に座りたいみたい。さっきまでメイリィさんが座っていた席に着いている、バルドさんの隣に佇んでいる。
「おら、お前ら、マオの合格祝いだ」
セロベルさんが、湯気の立つマグを沢山運んできた。マサーラーチャイだ。クローブと黒糖のいい香りがする。
マグをもらって、ふた口すすった。サフェくんもにこにこしてマグを持っている。いいな、こういう、平和な感じ。
セロベルさんと一緒にマグを配るサイレくんが、俺に耳打ちした。「明日は晴れだよ」
「ほんと?」
「ほんと。マオの門出を開拓者も祝ってるんだ。おめでとう」
頭を撫でられた。俺はへへへと笑う。お天気にまで理由はないに決まっているけれど、嬉しいものは嬉しい。雨のなかを御山へ向かうより、晴れた空のしたを歩くほうが、気持ちよそうだもの。
にやにやして、翌日を予想していると、バルドさんの膝に座ってマサーラーチャイをすするメイリィさんが目にはいって、危うく口のなかのものをすべて噴き出すところだった。やっぱあのひと面白いな。
メイリィさんと、ご飯を終えたサフェくんを誘い、お風呂へ向かった。俺はお客さん用のお風呂には近付くなと厳命されているので、従業員棟だ。サローちゃんのとこのバスソルトを溶かした湯船で、しっかりあたたまった。お湯の色はかわらないけれど、ちょっとしゅわしゅわして、爽やかなひのきの香りがふわっと漂い、湯冷めしにくい。
サフェくんは、俺が高級なシャンプーとヘアコンディショナーをつかっているのに、吃驚したみたい。つかっていいよと云うと、初めは遠慮していたけれど、結局つかった。こちらの世界では、髪は男らしさの象徴だから、綺麗にしたいのは当然だ。




