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うーん。俺以上に、のんびりしているひとみたいだ、メイリィさん。気が合うかもしれない。
ディロさんが困った顔になった。「あの話は、あれでお仕舞よ? 合格したのは全部で十五人だって。それだけ」
メイリィさんは首を傾げる。ディロさんが慌てた様子で付け加える。
「そうそれと、仲好くしなさいって。それだけ。ほんとにそれだけ」
メイリィさんはゆっくりと反対に首を傾げ、不審げに眉をかすかに寄せる。でも、納得いったのか、無表情で顔の傾きをもとに戻した。
「なにか、追加で、訓示があるのかと思ったのに」
「あんたそんなに長い文章喋れるのね」
ワウラさんが驚いた声を出す。失礼だが、俺もちょっと驚いていた。ディロさんは口をぽかんと開けているし、ランスさんも似たような表情で、サフェくんは手を停める。
メイリィさんは目をちょっと細めた。
「必要があれば」
「あ……そう」ワウラさんはくすっとする。「そうよね。必要に迫られりゃあ、誰だって会話くらいするわ」
メイリィさんが頷く。
結局、話題は別のことにかわった。先生達の名前を覚えないといけないのが心配だとか、学生達の名前も覚えたほうがいいのかもしれないとか、収納空間が審査されたのは研究資料を運ばされるからではないか……とか。
もし、研究資料を運ばされるとしたら、図書館に這入れるかもしれない。その時に本を読む時間があるとは思えないけれど、可能性があることは頭の片隅にとどめておこう。
五人は、今夜は四月の雨亭に泊まってくれる。「奉公が決まったお祝いに、観光案内で一番のお宿に泊まるって贅沢」
「わたしも、今までの努力へのご褒美ってところね。いい部屋とっちゃった」
ディロさんとワウラさんは上機嫌だ。ランスさんと一緒に、お風呂を堪能してくる、と居なくなる。
サフェくんはもう少し食べたいそうで、食堂に残った。俺は、ふらっと出ていったメイリィさんを追う。掴みどころのないひとで、前庭で空を見上げていた。月は出ていないし、星も少ないのに、わざわざ魔法の灯を出して。
「あの」
声をかけるとメイリィさんは、ゆっくり振り返る。目が合った。
「どうして、追加で訓示があると思ったんですか?」
メイリィさんはまた、首を傾げ、もとに戻す。中肉中背、と思ったけれど、首が結構太いから、体を鍛えているのかな。
メイリィさんは、考えるような沈黙の後、いう。
「奉公をしていたひとは、御山は、つらいところだと、云う。だから、なにか厳しい条件とか、労働があるのだと思う」




