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つくりかたは俺から伝えた。ぶどうのジュースとお砂糖、ほんとに少しだけのお塩とレモン汁をいれて、よくかきまぜてお砂糖をとかし、ホイッパでぐるぐるかきまぜながら冷やすだけ。
ディロさんは風魔法をつかえるのか、方法を説明すると嬉しそうにメモしていた。「ありがと。これ、御山でつくろう。あ、そうだ、後で料理人さんにもちゃんとお礼云わなくちゃ。マオちゃん、勝手に教えて、お店のひとから叱られない?」
「大丈夫ですよ」
にこっとした。シャーベットは、御山では普通に食べられているお菓子みたいだし、レントでも高級店なら出しているところもある。レシピを隠す意味はない。ディロさんのは杞憂だ。
それに、料理人がつくっているお菓子のレシピを勝手に他人へ教えた、と思われているのも、仕方はない。俺のこの風貌では料理人に見えないだろうから。
職業がどうのこうのは、些少なことなら気にしない。そう決めた。無駄だから。ここで訂正したって、あまり意味はない。
第一、俺が考案したお菓子という訳でもなければ、こちらの世界に存在しなかったお菓子という訳でもない。ただ単に、御山以外では一般的でないだけで、あるところにはある。だから俺が誇るようなことではない。
「さがせばあるもので、めずらしくもないですし、ここの料理人さん達は優しいので」
自分は料理人ではないが料理をしている、というような説明は煩わしく思えて、やっぱりしなかった。なんとなくいいわけめいたことを云う。ディロさんはくすくすして、メモをローブの内ポケットへ仕舞いこんだ。
「マオちゃんが可愛いから、優しくしてもらえるんだよぉ」
「え?」
「ディロ、そういうのは失礼なんじゃないかしら」
ワウラさんがたしなめるみたいに云った。ディロさんは首を傾げる。ランスさんとサフェくんは、口をぎゅっと噤んでなにも云わない。
メイリィさんが、シャーベットの器をお匙でかつんと叩いた。皆、そちらを向く。
「それで?」
なにかを促すような言葉だが、誰にたいしてなのか解らない。俺達はきょとんとして、なにも云えない。
メイリィさんは表情をかえず、お匙でディロさんを示した。「え、わたし?」
ディロさんが自分を指さす。メイリィさんは頷く。ディロさんはワウラさんを仰ぐ。
「え……っと、なんの話だったっけ?」
「なにって、荷物のことと、部屋のことと……」
「合格した人数のことですよね」
俺がそう云うと、メイリィさんがこっくり頷く。あの話題か。今頃?




