2054
数拍あった。俺は黙っている。
「わたしは反発しました。生まれて初めて、父に逆らったんです。弟も一緒でなければ絶対に結婚なんてしないと云いました」
きっぱりした云いかただった。俺は頷く。怒りで涙が湧いていて、言葉が出ない。そんな汚い取引は蹴って当然だ。ロイネちゃんの選択は間違ってない。
ふわっと、魔法の灯があらわれた。ロイネちゃんは微笑んでいる。
「余程、娘が不足しているのでしょう。取引の材料にできるくらいの娘が。エンバーダート卿は態度を軟化させました。わたしが入山試験に通るか、最終試験まで残れば、弟をつれていってもいいと」
それで……。
なんだか、色んなことが腑に落ちた。凄く。
食べながらも必死に勉強していたことや、焦っているのか態度がとても刺々しかったこと、などが。
ロイネちゃんはふふっと鼻で笑う。「わたしは、うかる自信がなかった。だから、必死で勉強した。そして、ジーナをおとしめようとした。ジーナになにか不備があれば、わたしの価値は相対的に上がります。入山試験の結果はどうでもよくなるかもしれない。そうすれば弟と引き離されることはない。それにもしかしたら、どこの誰か知らない相手でなく、名門ファバーシウス家の嫡男との縁談に、昇格するかもしれない」
ロイネちゃんは歯を軋らせた。
「そもそも弟は、生まれた時から失敗だとみなされていた。あの子はファバーシウスの次男の為に生まれたんです。女の子が生まれるよう期待されて、もし男の子でも能力が高ければ友人になれるようにとりはからう予定で。でも、女でない上に、けがらわしい娼妓なんて適職を持っている。そんな子はファバーシウス家の子どもの、友人になるのだって相応ではない」
気分が悪くなってきた。
家同士の結びつきを強くする目的で、計画的に子どもをつくる。それまでは、俺はできそうにないけれど、仕方ないと納得はできる。
「土地を持っている」ことは重大な既得権だ。それを失わないように、土地を持っていない家との婚姻は避けたい。だから、土地を持っている家同士、大体年代が揃うように子どもをつくって、婚約させる。自分は絶対しないけどするひとの気持ちは解る。
でも、確率を上げる為に愛人を沢山用意しておくとか、そのひと達に子どもを大勢うませるとか、そのなかから相応しい子を選別して家に迎えいれる、養育する、というのは、理解も納得もできない。したくもない。




