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「そう。そうです。わたしは期待されてない。それがずっと悔しかった。わたしはジーナの()()です。ジーナがどうしようもなくなったら、わたしがかりだされるかもしれない。ほかの、名前も知らない見たこともない姉妹かもしれませんが」

「あの」

「だからここに来たんです。ジーナがここに泊まって、家政を勉強していたと聴いたから。いよいよ、結婚へ向けて動き出しているのだと、こわくなったから」

 ふんとロイネちゃんは鼻で笑う。「ここに瑕疵があれば、その話をばらまいて、ジーナをおとしめてやれる。そう思った」

「ロイネちゃん」

「マオさん。わたし、弟が居るんです」

 俺はまた、口を噤む。この子には喋らせたほうがいいのかもしれない。喋りたいようだから、思う存分、喋らせたほうが。

 ロイネちゃんは顔を歪める。今日初めて、表情らしいものが見えた。

「弟もエンバーダート卿の子どもです。でも適職が、娼妓と雑役です。能力値も低い。特殊能力は収納空間だけ。エンバーダート卿は弟を無視しました。そのくせ、乳母を寄越して、その乳母が弟とわたしが会うことを制限します。わたしが弟を好きにならないように。わたしが進むみちの障害をとりのぞくと云われました。弟が障害だというのならわたしはそんなみち進まない」

 魔法の灯が激しく揺れ、ぱちんと弾けるように消えた。


 食堂からの喧噪が、はっきり聴こえる。

「わたし、エンバーダート家にはいれるんです」

「え……」

「今年の初めに聴かされました。母は喜んでた。条件をのめばいつだって、エンバーダート家はわたしを迎えいれる。条件はたったのふたつだけ。エンバーダート卿が決めた縁談に逆らわないこと。それから弟と縁を切ること」

 心臓が停まったかと思った。

 弟と? 縁を切る。その子も、エンバーダート卿の子どもなのに?

 そしてその子は、ジーナちゃんのきょうだいでもあるのだ。

「エンバーダート家にやっと、認められたと思った。勘違いでした。駒が不足しただけ。わたし以外に適任が居なかったんでしょう。エンバーダート卿は、どこかの家と、婚姻によって縁付きたい。適任がわたしだった。そういうことです。……婚姻だけなら従ったでしょう。それまで隠していた子どもを、婚姻前に迎えいれて正式なことして認めるというのは、めずらしいことではありませんし、はじとも思わない。エンバーダート家から嫁ぐのなら、相手の家でも丁寧に扱われる。蔑ろにされることはない。そして、エンバーダート家が娘の婚姻相手に選ぶのだから、家格は申し分ない筈です。でも弟のことは承服しかねた」


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