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「たまたま同じ日に生まれた子ども同士を婚約させ、まったく同じ特殊能力だからと婚約させ、偶然同じひとが出産に立ち会ったからと婚約させ、祖先の占い師が予言した通りの子だからと婚約させる。わたしには、そう云った幸運はありませんでした。ありふれた特殊能力。特に低くも高くもない能力値。平凡な容貌。エンバーダート卿にできるのは、将来どうにかなることを期待して、わたしにいい教育を施し、鍛錬させることだけです」
目を開ける。ロイネちゃんは無表情だった。完全に。ジーナちゃんとは似ても似つかない顔立ちだけれど、その表情は少しだけ、ジーナちゃんに似ていた。
俺はしゃっくりを飲み込む。
「ジーナの存在は、幼い頃から知っています。隠密を持ち、賢く、強く、お人形のように可愛らしい。わたしは努力したけれど、差は年々開くばかりです。ジーナはひとりでも魔物狩りに出ることができ、わたしにはそれができない。賢さでもかないません。あの子は男に負けないくらいに賢い。そしてジーナは、エンバーダート家を嫌っている家の人間さえ誉めるくらいに、見目麗しい。わたしは母かたの祖母の血が濃く出て、裾野ふうの顔立ちですから、美しいとは云われません。殿方が女に求めるのは、能力の次には外見でしょう……その上、ファバーシウスの嫡男と、膠でくっつけたようにひとときだって離れない」
ロイネちゃんは頭を振る。「スニッペン家は宴に招かれることも稀ですが、行けばジーナとファバーシウスの嫡男のことを聴きます。わたしがみすぼらしいドレスでこそこそと人脈をつくる間、あの子は職人に特別につくらせたドレスを着て、ファバーシウスの嫡男とべったりくっついて、宴の最中だというのにふたりで部屋へ下がって、秘密のお喋りだかなんだかで親密になって。ジーナは美しいのを鼻にかけて、ファバーシウスの嫡男を束縛している。ファバーシウスの嫡男が傍に居てくれないと、気絶したふりまでするとか」
「それは違います」
思わず反論した。ロイネちゃんは片眉を吊り上げる。俺は云う。
「ミューくんはジーナちゃんを心配しているだけです。癒しの力があるから。ジーナちゃんはその……家族からの期待が重たくて、具合があまりよくなくて」
「……そうですか。具合がよくなくても、あの子は御山にはいれる。ぴんぴんしているわたしははいれない。そういうことですね。エンバーダート卿から期待されない訳ですね」
俺は口を噤む。ロイネちゃんは肩をすくめる。




