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ロイネちゃんが黙った。俺が理解しているか、というか、ちゃんと聴いているか、確認したいのかもしれない。だから俺は頷く。
「……子どもは沢山居るようです。正確な数は知りません。なかには、エンバーダート家の分家から望まれて、そちらへ養子にはいった子も居るそうです。能力値や特殊能力が、エンバーダート卿が望む程ではなく、かといって放っておくには惜しい、それくらいだったのでしょう」
情報が浸透していく。頭が爆発しそうだ。この話は聴きたくない。神経がささくれ立つ。子どもを蔑ろにするやつは全員酷い目にあえばいいんだ。
「母は、教師です。能力値は低くありません。実家が裕福ではないので、さる大司教のお宅で家庭教師をしていました。その時に、お茶会に来たエンバーダート卿に見初められたそうです。当時も今も、そう云った話に関して、女は決定権を持ちません。勿論母も、自分で決めることはありませんでした。母の父が、よい話だからと、エンバーダート卿の許へやると決めたのです。能力値の高い子どもを産めば、その子がエンバーダート家を継ぐかもしれない。もしかしたらファバーシウス家と縁付くかもしれない。そうなれば、その子の生母とその実家は安泰です。母の父はそれに惹かれたのです。そう云った思惑の許にわたしは生まれました」
なんの感情もない声で、それがこわい。この子はつらい思いをしてきたんだろう。だから、まるで自分のことを話すのではないみたいに、こうやって淡々と喋っている。
それにしても、ディファーズでは女性の地位が低い、というのは、本当なのだな。結婚だの愛人だのの話でも、当人に決定権がないなんて、狂ってる。それに、女性も子どもも、権力を得る為の道具ではないのだ。なんの敬意も払われないなんて、ろくでもない。控えめに云って最低だ。
ロイネちゃんはやはり淡々と続ける。
「残念ながら、生まれたばかりのわたしには、そう云った魅力はありませんでした。間も悪かった。そして隠密を持ったジーナが生まれた。ファバーシウスの嫡男は、なにかとてもめずらしい特殊能力を持っているようです。そのような話を聴きました。やはりとてもめずらしい隠密を持っているジーナと、かりに婚約したのだから、そういったことに縁を感じたのでしょう。ディファーズではよくあることです」
すーっと、また、深く息を吸っている。俺はなにかいいたいのに、なにも云えない。この話を聴くのはつらいけれど、ロイネちゃんが喋ろうとしているのを停める権利はない。俺に力はないのだ。
誤字報告ありがとうございます。助かります。




