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「マオ」
トイレ休憩をはさみつつ、五人とお喋り(メイリィさんは頷くか頭を振るかだけど)しながらお握りの山を半分くらいの高さまで切り崩したところで、クーアくんのお世話から戻っていたグエンくんが、近寄ってきた。耳打ちされる。「いつもの、鳶色の髪の子。話したいって。いい?」
鳶色の。あの子、来たんだ。最近見かけていなかったから、ちょっと心配してた。
立ち上がって、食堂内を見渡す。が、鳶色の髪の子の姿はない。グエンくんがくすっとした。
「マオならそうやると思った。あの子今夜は、弟さんと食べるからって、お弁当買っていったよ」
ほう。
お弁当を買う時に、こんなににぎわっているのはなにかのお祝いですか、と、あの女の子が云ったらしい。もしかしておかみさんが、と云っていたそうだから、リエナさんがとても子どもをほしがっているのを知っているんだろうな。
カウンタに居たウイザリオさんが説明して、そうしたら、俺と話したいとあの子が云ったらしい。で、給仕中のグエンくんが言伝を預かってきた。
「じゃあ、外?」
「ん。前庭に居る。マオの都合が悪かったら、いいって」
「でも、俺、明日には御山だから……行ってくる」
「うん」
俺は収納空間からローブを出し、羽織った。五人に説明する。「知り合いが来たから、ちょっと話してくる」
「行ってらっしゃい」
メイリィさん以外はにこにこして、云ってくれた。メイリィさんは手を振ってくれる。五人が奉公人仲間だと知っているグエンくんはにこっとした。安心した、という感じの顔だ。それから、お握りのお皿を示し、いたずらっぽく云う。「帰ってきたらこれなくなってるかもよ」
「そんなことしたら絶交だから!」
グエンくんの笑い声をせなかにうけながら、前庭へ出た。
日が暮れているが、外は仄明るい。軒先に吊した灯がぼんやり光っている。それに女の子は、魔法の灯を点していた。ビーチボールくらいの、淡い光の塊を、右手に持っている。というか、右手の上に浮いている。
「こんばんは」
「……こんばんは」
お辞儀すると、あちらもぎこちなくお辞儀してくれた。俺は後ろ手に扉を閉め、女の子に近付く。
「お話って……」
「はい」
女の子は、なにか決意するみたいに、深く頷いた。
「まず、今までなのりもせずに、失礼しました。わたしはロイネ・スニッペンと云います」
「あ、はい……マオ・クニタチです」
なんとなく、こちらもなのる。女の子……ロイネちゃんは、頷いて、ぼそりと云った。
「あなたはわたしの妹をよく知っているでしょう。わたしはジーナ・エンバーダートの姉です」




