2041
気分が悪い。ひたすらに。
「マオ?」
天幕を出て、暫く行ったところで、俺はうずくまって丸まっていた。吐き気がする。
ランスさんと、サフェくんが、心配そうに近付いてきた。「ちょっと、大丈夫?」
大丈夫じゃない。合格したんだ。奉公の試験に。だから御山にはいれる。そこで、もとの世界へ戻る方法を、調べられる。
なんだかよく解らない。自分の感情が掴めなかった。嬉しいし、驚いているし、戸惑っていて、こわい。それらが合わさって猛烈に気分が悪い。
ほんでおなかすいた。
サフェくんが俺の隣に両膝をついて、せなかを撫でてくれた。「ランス、誰か呼んできてもらえますか。先生に伝えれば、癒し手を寄越してくれると思う」
「解った。ちゃんと見ててね」
あしおとがとおざかっていった。サフェくんはやわらかく云う。
「マオさん、大丈夫だよ。ランスが癒し手、つれてきてくれるから」
頷くこともできない。ただ、唸るだけだ。サフェくん、ランスさんには敬語で、可愛いな、と思う。
暫くすると、ふたり分のあしおとがして、更にもうふたり、それを追ってきた。「マオ、先生つれてきた」
「大丈夫ですか、マオさん。 チハル先生」
「魔力の枯渇ではありませんね」
カンナさんと、チハル先生だ。まだ試験があるだろうに、来てくれたらしい。
ひとり、走っていった。誰かが俺の肩に手を置いて、恢復魔法をかけてくれる。燕息だ。ちょっとだけ気分がよくなった。ランスさんとサフェくんが、心配そうに低声で云う。
「先生、マオは」
「大丈夫なんですか」
「心配ないですよ。合格したので、喜びすぎたんでしょう。倒れるひとはたまに居ますから」
多分、シシース先生だ。癒しの力、持ってるんだ。
喜びすぎて気分が悪くなった訳ではないが、ランスさんとサフェくんはそれで納得したみたいで、ああ……と声をもらす。ふたりも、喜んで、気分悪くなったのかな。
「シシース先生、つれてきました」
「ああ、久しいね、セリィ」
のろのろと顔を上げる。カンナさんの隣で、セロベルさんが、ばつの悪そうな顔で立っていた。「シシース先生、どうも、ご無沙汰してます」
「まったくね」
シシース先生はにっこり、セロベルさんを仰ぐが、目が笑っていない。「君は本当に、美人を侍らせるのが好みみたいだね……?」
「いえあの」
「ああ、そんな話をしている場合ではなかった。彼は気分が悪いようだから、君がつれて帰りなさい。解っているだろうけれど、明日のお昼の祈りの鐘までに、二の門までつれてくるよう」
セロベルさんが神妙に、はい、と応じた。




