2040
はい先生、と、五人は声を揃え、俺は口を半開きにしたままだった。理由は解った。理屈は。
つまり俺は本当に合格したのだ。
急激に、心臓の打つ速度がはやくなる。息が苦しい。
ジアー先生はまだ喋っている。
「ルーシェフェンとランティエーナを、ほとんど同率で二位、三位につけたのも、同じ理由です。奉公人同士は助け合う。協力し合う。その為には、解らないことは解らない、知らないことは知らない、できないことはできない、それを認める勇気が必要になる。君達ふたりは、洗濯をしたことがない、方法が解らない、だから教えてほしい、そうマオに頼んだね」
「はい……」
サフェくんが首をすくめて返事した。ランスさんはまっすぐにジアー先生を見て、頷く。「はい。わたしは洗濯なんて、まともにやったことはありませんでした」
「うん。それはいい判断です。君達は知ったかぶりで、間違った方法で洗濯することも、もしくはひとつ目の審査は落としていいからと洗濯そのものをしないことも、できた。だが、はじを忍んでマオに助けを求めた。それは評価されるべき行動です。そして、君達の素直で、隠しごとをしないところも、奉公人として適性があると認められた。学生同士、もめごとが起こらない訳ではないし、そういう場合に奉公人が証言を求められもする。だから、正直さ、素直さは、奉公人に必要だ」
ふたりが頷く。俺はなんとか、落ち着こうとしている。でもだめだ。心臓が暴れているし、肺は職務放棄しようとしている。
ジアー先生がサンティエックさんを見た。
「君はまったく、素晴らしい家政魔法の遣い手だ。職業が家政婦なのにそこまでできるのは、努力のたまものです。御山は努力する者を拒まない」
「ありがとうございます」
サンティエックさんはまた、飛び跳ねる。
「ワウラ、君の収納空間はなかなかのひろさだし、洗濯もできていた。活躍してくれると、期待しているよ」
「はい、先生」
ワウラさんは微笑んで応じる。声は低めで、ちょっとだけ掠れていた。
「マリリヴェ、君もまた、優秀な家政魔法の遣い手だ。まだまだ伸びしろはある。これからも精進し給え」
「はい」
マリリヴェさんはゆったりと返し、軽く頷いた。
ジアー先生がにこっとして、試験監督を見る。試験監督は笑みを返した。
「ジアー先生のお話もすんだ。君達は一旦、家や宿に戻って、荷物をまとめ、さっきも云った通り、明日の昼の祈りの鐘までに、二の門まで来なさい。遅れる場合は伝えてくれれば、八日間は猶予をやろう。連絡がない場合は、奉公人になる意思なしとみなして、不合格にする。では、解散!」




