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うかった? おれが? はあ?
てなものである。どうして俺がうかるのか、意味が解らない。サンティエックさんとマリリヴェさんは多分家政職で、俺よりもはやくお洗濯を終えていた。それがどうして、俺よりも成績が悪いのか。
試験監督がにこにこしている。「あまり、嬉しそうに見えないひとも居るね」
俺のことだろう。だって、理由も解らないし、戸惑うしかない。
ジアー先生がゆっくりと喋る。
「これは、奉公人の心得に関する話ですので、皆こころして聴くよう」
訓示だな。聴かなきゃ。ああ集中できない。
俺はなんとか、ジアー先生に目の焦点を合わせ、言葉を聴こうとした。
「マオが一位で合格したことを、疑問に思っている者も居るでしょう。洗濯では、彼は十番目に提出したし、乾かしてはいなかった。サンティエックやマリリヴェは、短い時間で完璧に洗い、乾かして、持ってきたね」
ふたりが頷いて、ちょっと満足そうにする。その辺りを評価されなかった訳ではないし、俺が時間をかけてもっと綺麗に洗ったり、いい状態で持っていった訳ではないと、安心したみたい。
ジアー先生も頷く。
「マオからは、魔法をつかうことができないので乾かさずに持ってきたと、正直な申告をうけました。彼が洗濯物を乾かさなかったのはそういう理由からです」
ざわっとした。合格者達が。サフェくんもランスさんも、俺が魔法をつかうことができないとは気付いていなかったらしい。「しかし、マオの収納空間は、めったにないくらいにひろい。収納空間がひろく、沢山のものをいれられるのは、御山では役に立ちます。その上、魔力の枯渇を起こしそうにないと、力の実見者でもあるチハル先生が断言した。……ただ、それだけで合格させたのではありません」
ジアー先生は息を継ぐ。俺は段々と、落ち着いてきて、先生の穏やかな語り口を聴いている。
「家政魔法も、それ以外の魔法も持たずに、工夫だけで洗濯をこなし、魔法はつかえないと正直に云った。そして、他人に惜しみなく知識を分け与えた。そうだね、ランティエーナ、ルーシェフェン?」
ランスさんとサフェくんがはいと返事した。ジアー先生は満足そうだ。「奉公人同士は、助け合わなくてはいけません。ひとりが困っていたら皆で助ける。それが奉公人のあるべき姿です。奉公人というのは、競争をしている訳ではない。飽くまで、御山に奉公している。入山者の為に働いている。自分ひとりが得をすればいいという考えでは、御山の為になりません。それを肝に銘じて、勤めてもらいたい」




