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は?
ランスさんが跳び上がり、サフェくんが俺の肩を掴んだ。ふたりが小さな声でいう。「マオさん」
「やった、マオ、凄い」
俺は口を半開きにしていた。いつものことだ。お馴染み、吃驚してまぬけ面をさらしているのである。
衝撃が去らないのに、試験監督は無情にも続ける。
「次、ルーシェフェン・クー」
「え、」
サフェくんがかたまった。大きく口を開き、こぼれ落ちそうに目を開いて。
ランスさんが嬉しそうに、その肩を叩く。「ちょっとあんたもじゃない、よかったね」
「ランティエーナ・ルカッツェ」
ひっとランスさんは息をのみ、やはり体を強張らせた。サフェくんはまんまるの目で、それを見る。「え……僕達三人とも……」
「え? ……え?」
「サンティエック・リンネー。ああ、ジアー先生が誉めていたひとだね、素晴らしい家政魔法の遣い手だ」
小柄な女性がきゃっと、一瞬嬉しそうな声をあげてから、ぴょんぴょん跳びはねている。俺は振り返って、ぼけーっとそれを見ている。
「さて次は、ワウラ・モーンディアンス。最後は、マリリヴェ・ミッセンシャーエナ。以上六人が合格。それ以外は退出するように」
多くの受験者が肩を落として出ていった。天幕のなかは、途端に淋しくなる。人間の密度が減った。あ、結構ひろかったんだ、と思う。
後ろのほうに居た、サンティエックさん、ワウラさん、マリリヴェさんが、前方へと移動させられた。六人、試験官の前へ横並びになる。チハル先生の前が俺、カンナ先生の前にマリリヴェさん。順位の通りに並んでいる。
サンティエックさんは俺と同じくらいの歳に見える、小柄で、焦げ茶のふわふわした髪をおろした、白桃色の肌の、ピンクのドレスの女性。
ワウラさんは、細身で長身、赤い髪を短く切った、弓を背負った女性。二十歳前後かな。はちみつ色の肌で、右頬から顎にかけて、なにかにひっかかれたみたいな傷痕がある。
マリリヴェさんは、肩くらいまでの灰色の髪を、金のバレッタで簡単にハーフアップにしただけの、中肉中背の男性。俺より歳上だと思う。あと、多分だけど、耳飾りをしていない。肌の色は、シアイル系っぽい白さだった。
「まずは、合格おめでとう」
試験監督がそう云う。サンティエックさんが飛び跳ねた。「ありがとうございます」
とても嬉しそうだ。長年、ここを目指していたんだろう。素直に喜ぶサンティエックさんに、試験官達は微笑む。
試験監督がなにか云ったが、俺は聴いちゃいなかった。まったく、なんにも、今の情況が飲みこめていない。




