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ふたりが低声で、洗濯についてお喋りしていると、試験官達がばらけた。
俺達のように、数人ずつでまとまって、こそこそ話していた受験者達は、さっと列をつくる。チハル先生の傍に集まっていた試験官達も、最初みたいに横並びになる。満足そうに頷いている試験官が多い。
「奉公人の試験では入山試験のように後から結果を知らせることはない」
試験監督が前置きなく喋り出した。受験者達に緊張が走る。俺はぼーっとしている。つまり、今ここで、合格者の発表があるのだろう。後から報せが来ることはない、というのは、そういう詐欺でもあったから注意喚起している、のかもしれない。ありそうだからさ。
チハル先生が羊皮紙の束を試験監督へ渡す。収納空間の、点数、といったらいいいのかな。そう云ったものが書いてあるのだと思う。試験監督はそれをうけとって頷き、しかし見ることはない。
「合格者の名前を呼ぶ。呼ばれなかった者は出て行きなさい。名前を呼ばれた者は、準備を整え、明日の、昼の祈りの鐘がなるまでに、西の二の門まで来ること。そこでシシース先生が待っている。シシース先生は智慧者でもあるので、合格者の顔はしっかり覚えている。合格者になりすまそうものなら生涯、御山には関わらせない。その生涯が長いか短いかはわたしは保証できない。妙な気を起こさないように」
さっき、能力証がどうのこうので、ひと悶着あったから、受験者達は黙りこくっている。それにしても、結構な脅迫だな。なりすましてでも御山にはいりたいひとが居るってことだろうけど、ちょっとこわい。
しかし俺は暢気に、俺になりすまそうとするひとは居ないだろうなあ、髪が短くて耳飾りもつけてないなんて、そんな格好したくないだろうし、と考えた。
まあ合格する保証もないし、というか、多分合格はない。俺の三分の一くらいの時間で、お洗濯を完璧にすませていたひとが、三人くらい居た。奉公の試験はその都度、合格人数が違うけれど、補充の為なんだから大量には採るまい。
帰ったらご飯食べよ。おなかすいたし。実は、サキくんが元気なくて、第二の丘まで行く馬車のなかで、ふたりでおやつしてたんだよね。それでも、お昼食べてないから、おなかすいてきた。順番待ちしてる時に食べてたらよかったな。
試験監督が両手で羊皮紙を持った。
「成績優秀者から名前を呼ぶ。音の順ではないから、最後まで聴くよう。この組の最優秀者は、マオ・クニタチ」




