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けど、サフェくんは小さく頭を振った。
「たいしたことだよ。マオさんが教えてくれた。僕がマオさんの立場だったら、絶対に教えないようなことを。だって、他人を助けて自分が失敗するなんて、ばかみたいだもの」
ばかみたいというか、俺はばかなのだ。なんにも考えちゃいない。でももし、それに思い至ったとしても、教えただろう。
「それは、別に、俺が凄いんじゃないよ。だって、ふたりが試験、だめだったとして、俺が確実にうかる保証はない。俺より手際よくお洗濯してるひとだって居たもの」
「だからって、わたし達を助ける理由にはならない。でしょ、サフェ」
「うん」
サフェくんは頷く。「でもさ、こうも思った。ばかみたいだけど、気分がいいなって。僕も、おんなじような場面にでくわしたら、同じことをしたほうが後から……僕入山試験で、意地の悪いことしちゃったんだ」
サフェくんの声が震えて消えた。涙ぐんでいる。ランスさんが小首を傾げる。
「まちの外での試験で、試験会場の場所、訊かれたから、わざと間違った場所教えた。知り合いで、嫌いだった。魔力魔法をつかえるのを鼻にかけてるようないやなやつだよ。そいつは試験会場に遅れてきて、落ちた。でも僕も落ちた。順位はそいつより下だった。もしかしたら、嘘を吐いたのが試験官にばれてたのかも。それがなかったらうかってたのかも。だからマオさんのしたことは、正しいし、ばかじゃない。ぼくみたいにずるいことをしようとするのが、ばかなんだ」
うーん。サフェくんの話だけじゃ、判断できないけど……本当に、意地が悪くて、今まで迷惑被ってきて、だいっきらい、って思ってたんなら、嘘を教えてしまっても、仕方ない気はする。それくらいの意地悪は、誰だってしちゃいそうになるし、実際してしまうひとも居るのだろう。
サフェくんは反省してるんだし、それでいいんじゃないかな。そのことをずっと覚えてて、後悔してるのは、自分がうかる・うからないってことじゃなく、純粋に相手に対して申し訳なく思っているから、な、気もするし。
俺は数回頷いた。
「俺だって、意地悪する時もあるよ」
「でもさっきは優しくしてくれた。だから、ありがとう、マオさん。僕、次の試験もうける」
あ……感触、よくなかったのかな。サフェくん頑張ってたし、可能性がない訳じゃないと思うのだが。
サフェくんは楽しそうにしている。
「洗濯、楽しかったから、今度からは自分でやろうかな」
「あ、それわたしも思った。楽しいよね、洗濯。最近傭兵やってたんだけど、洗濯工房に勤めようかなって思うくらい、汚れが落ちるのが面白かった」
「ですよね」




