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 ランスさんはなにか考えるみたいな、ちょっとした沈黙の後、静かに云った。

「ずっと、どっか痛いみたいな、変な感じがしてたの。疲れるまで走った後みたいな、苦しいのに咽がつかえてて水も飲めない、みたいな」

 数秒、黙る。それから続ける。

「なにしてても最後の入山試験のことがちらつくんだ。あの問題間違ってたなとか、あっちは設問の意図が解ってなかったとか、実技の前にもっと気持ちを落ち着かせておけば……とか。もう、ずっと、そういうの、考えてる」

 サフェくんが段々、泣きそうな顔になってくる。身につまされるのかもしれない。数回頷いていたから。サフェくんも、資格を失効したのかな。


 受験資格を失ったばかりでは、そのショックはまだ大きいだろう。でも、毎日楽しくご飯を食べて、ぐっすり眠って、快適に過ごせば、すぐに忘れる。ふたりともまだまだ、子どもみたいなものなんだし、人生これからいいことが沢山あるに決まってる。おいしいもの食べるとか、面白い本見付けるとか、景色がいいところ発見するとか、楽しいこといいことは沢山あるのだ。

 それに二・三年程度ならひきずっているとは云わない。俺はもっと昔のことを忘れられないでいる。でもそれだって、毎日々々うすくなる。人間の怒りってそんなに続かない。

「ふたりとも、頑張ってたんだねえ」

「なに、暢気な……あんたやっぱり、変だよ」

「よく云われる」

「あっそ」

 ランスさんはくすっとする。「でも、試験うけてよかった。どうしてだか、気が楽になったの。マオみたいに、面白いやつも居たし、凄い収納空間も見せてもらえたから、なんか楽しかった」

 お、サーカス的な扱いかな。それともいろもの? いずれにせよ、ランスさんの気が楽になるお手伝いができたのなら、なんとなく嬉しい。

「あの」サフェくんがにこっとした。「僕も。ずっと、ぴりぴりしてて、自分でもどうしてか解らないくらいいらいらしてて……今日も、洗濯なんてしたことないし、ついてないな、やだな、また試験に落ちるのかって思ってた。でも、マオさんが教えてくれたから、巧くいくかもしれないって希望も持てたし」

「たいしたことじゃないよ」

 やけに感謝されているので、思わずそう返した。

 実際のところ、俺は洗濯の仕方を教えただけで、ふたりがそれをやるかは自由なのだ。聴くだけ聴いて、無視することだってできる。そういうひとはめずらしくない。

 でもふたりは、俺の言葉を信じてお洗濯をした。そもそもその前に、風体の怪しい男に教えを乞う、という勇気ある行動をとっている。どっちもふたりの手柄であって、俺の手柄じゃない。


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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