2033
俺の収納空間はやっぱりひろかった。
チハル先生がもの凄い勢いでお水を注いでも、ダーニェア先生が面白がって、残りの水魔法のひと達をけしかけ、そのひと達が注いでも、俺の収納空間にはまだまだ余裕がある。学生がひとり倒れ、残りも気分が悪そうに魔法を停め、チハル先生も手をおろす。
「これは……」
「うむ」
「素晴らしい」
「気分が悪くはないですか?」
にこにこ笑顔のダーニェア先生に訊かれたので、頷いた。「なんともないです」
「それは凄い!」
「まったくもって」
「わたしもダーニェア先生と同意見です」
なんだか誉められている。収納空間あってよかった。
雰囲気がいいので、今だと判断した。俺は云う。
「あのー、訊きたいことがあるんですが」
「なんだい?」
「このお水って、もらっていいんですか?」
笑われた。
もらえるらしいので、俺は大喜びだ。にこにこで、ちょっとさがる。サフェくんの隣に並んだ。「お水、もらっていいって」
「はあ……」
呆れたみたいな顔をされてしまった。えー、だって、お水はあったほうがいいじゃないか。お水と空気はないと死ぬ、大切なものなんだぞ。こっちだと魔法があって、お水も普遍的だから、あんまり感謝してないけどさ、みんな。
試験官達は寄り集まって、こそこそと言葉を交わしている。なんだか亢奮気味だ。収納空間がひろいのに驚いたのかな。めずらしい特殊能力、大好きだもんな、御山って。
サフェくんの顔色が悪くなってきたので、俺はこっそり耳打ちした。
「お水、ひきとろうか?」
「え?」
「サフェくん気分悪そうだもの。俺はお水もらえたら嬉しいし」
「えっと……」
サフェくんは寸の間、逡巡を見せたが、やはり魔力の目減りを我慢していたようだ。「……じゃあ、お願いします」
「こっちこそ、ありがとう、お水」
ほくほく顔で収納空間の口を開く。サフェくんもそうして、俺の収納空間へお水を移した。暫くお水の心配要らないなこれは。水魔法で出したお水って綺麗だし、お茶を淹れるには一番ってくらい、おいしくて癖のない味なのだ。水魔法が達者なひとなら、かわった味のお水とか、毒のあるお水も出せるそうだが、試験でそんなことしないだろう。
ま、後でメニュー画面開いて確認すればいいし。飲めないお水だったら、勿体ないけど捨てよう。
サフェくんが収納空間の口を閉じ、俺もそうする。試験官達の話し合いが続くなか、収納空間持ちでないひと達が、そーっと近寄ってきていた。試験官がなにを話しているのか気になるのだろう。




