2029
あ。
それはまったく考えていなかった。俺はえへへと笑う。サフェくんが毛織のローブを別のたらいへ移し、せっけん液を流して捨てる。
ランスさんは渋い顔だった。
「なんにも考えてないんだね、あんた」
「多少は考えてますよ。晩ご飯のこととか」
溜め息を吐かれた。ありゃ。
「……ま、いいや。ふたつ目の審査、あんたが解らないようなことだったら、助けてあげる」
「え、ほんとに?」
「でも、個人戦だったら期待しないでよ。その場合は、試験終わってから、なんかおごる」ぷいとそっぽを向いてしまう。「よくしてもらったし、お礼はちゃんとしないとだから」
おお、らっきー。お安い串焼き屋さんでもつれてってもらおうかな。パイナップル&牛串がおいしいんだよねえ。腸詰め&アスパラ串も好き。
俺はうきうきと、はい、と返事した。ランスさんは肩をすくめる。
にしても、そうかあ。個人戦ね。そういう試験って可能性も、あるのかあ。俺は戦えないからな。もし、ふたつ目の審査がそういうないようなら、棄権しよう。それしかない。
推薦状を書いてくれたひと達には申し訳ないが、できないものはできない。怪我をするのはいやだし、セロベルさんに叱られそうだから、戦いなら棄権。それでいい。
サフェくんがお洗濯を終え、風魔法で簡単に水気を切り、試験官の許へ持っていった。ほとんどのひとがそれなりに作業をやり、つったって待っている。
奉公人がすーっとやってきて、サフェくんのつかったたらいや籐かごを片付けはじめた。俺は奉公人がたらいを収納するのを手伝い、籐かごもそうする。丁寧にお礼を云われた。
「あんたってほんとに解んない」
「え?」
去って行く奉公人を、軽く手を振って見送る。ランスさんがぼそっともらしたが、きき返してもなにも云ってくれなかった。
「なんとかなりました」サフェくんが走って戻った。「マオさん、ありがとう。とっても助かった」
「ううん。気にしないでください」
「いえ、僕もなにかお礼、します。次の審査、手伝うし、手伝えなかったらほかのことします」
サフェくんははきはきと云い、俺に深く頭を下げた。ランスさんが云う。「こいつも変だわ」
巧く洗えているかは別として、お洗濯をしなかったひとは居なかった。全員、一応お洗濯をして、試験官に見せ、戻って待機している。
全員がお洗濯をこなし、試験監督が手を打ち鳴らす。
「洗濯は審査終了だ。次の審査に移ろう」
ごくっと、ランスさんが唾を嚥んだ。緊張した様子だ。
試験監督が云う。「次は、君達の持つ収納空間を審査する。収納空間持ちでない者は後ろへさがるように」




