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 支給された籐かごとたらいは、なくなっていた。ランスさんに訊いてみると、簡単に返答がある。

「奉公人が来て、片付けてった。ほかのやつらもそうみたいよ。終わったやつは……よし、これでいい。提出してくる」

「あ、頑張ってください」

「……ありがとう」

 ランスさんは微笑んで、籐かごを抱えて走っていく。頑張れは間のぬけたはげましだったな、と思った。お洗濯を頑張った後なのだし、試験官達は意地悪な質問なんてしてこない。素直に答えればいいだけだ。

 家政職と思しいひと達は、全員手持ち無沙汰なのか、仁王立ちで動かない。俺はきょろきょろと、辺りをうかがった。剣や槍、杖なんかを脇に置いて作業しているひとは、大概苦戦しているようで、諦めた様子のひとも居る。「あの」

「はい」

 反射的に笑顔を向けた。接客業を長くやっていると、どうしてもとっさに笑顔が出る。

 俺の後ろの、丸顔の男性だ。(たし)か、ルーシェフェン・クーだったかな、名前。二十歳前後で、緑色の髪を凝った形のシニヨンに結い上げている。

「なんでしょう?」

「すみません、僕にも教えてもらえませんか? こういうのやったことなくて……」

 ほう。


「なにしてんの?」

 戻ってくるや、ランスさんは怪訝そうにそう云った。サフェくん(そういうあだ名なんだって)のたらいの傍に立って、かさつく手にバームを塗り込んでいた俺は、振り返る。「あ、どうでした、ランスさん」

「どうって……別に。色々訊かれて、答えて、お仕舞。って、そうじゃなくて」

 ランスさんはサフェくんを指さす。「また、教えてるの?」

「はい」

 頷いた。サフェくんは照れたみたいに、えへへと笑っている。小さくて綺麗な形をしたあしで、わしわしと洗濯ものを踏みつけている。

 ランスさんが溜め息を吐いた。

「呆れた……あんた、いいやつだけど、損するよ。わたしに教えただけでも、自分が通る確率を下げてるんだから。ひとがよすぎる」

「はあ」

 ひとがいい、と誉められるのは、いい。意地悪だと罵られるよりずっと。

 お洗濯は、できたほうが役に立つことだしな。家政職という専門家は居るけれど、そういうひとが居ない情況で、お洗濯する場面がないとも限らない。それに、ワインとかトマトソースの染みも、応急処置できるできないで違うしね。

 大体、俺はそこまでいいひとではない。

「えっと、俺のほうが巧くできると思うし、大丈夫です」

「なによそれ。あんた、試験官の話聴いてなかったの? 審査はふたつあるの。ふたつ目がどんな審査か解らないじゃない。あんたの不得意なものだったら? どうするの」


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こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
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