2026
見遣る。せっけん液は細かく、沢山の泡がたっていた。充分だ。
にこっとする。忠実に指示をきいてくれるのは、感じがいい。素直なひとだな。
「じゃあ、汚れものを選り分けてください」
「選り分ける?」
「まず、麻とか綿を洗うんですよ。あったかくても傷みにくいので」
別のたらいから、麻と綿の服を戻した。サッディレくん夫婦や、風呂焚き担当の子達につくってもらったお湯を、お水と一緒にたっぷり注ぐ。服を解し、踏みつけた。
ランスさんは、困った顔で、籐かごの中身を選別していた。俺は収納空間からもうひとつ、たらいを出して、屈み込み、ランスさんのたらいの隣へ置いた。籐かごも出す。洗い上がったものを、そうでないものがはいっていた籐かごに戻したくはない。
「選り分けたら、麻と綿だけたらいにいれて、踏んでください」
「うん……」
受験者が試験官のもとへ行っている。洗い上がったのだろう、ふっかり乾いた洗濯ものを、籐かごに山盛りにしている。家政職のひとかもしれない。
俺はたらいのなかに、収納空間の口を開ける。お湯はいれ、と思った。収納空間でお湯を回収する、という試みは、成功する。
もう一度、ぬるいお湯をはり、軽くゆすいだ。これでいいだろう。一枚々々しぼり、綺麗な籐かごへいれる。風魔法があれば、すぐに乾かせるのにな。
あしを拭ってたらいを出る。くつをはいて、屈んだ。絹のローブを丁寧にゆすぐ。ランスさんは、服の裾をたくしあげて、たらいのなかでまわっていた。うーん、解る。なんか、まわっちゃうよな。
絹のローブが洗い上がったので、収納空間から大判のタオルをとりだし、水気を吸わせた。しぼったくらいには水気がとれたので、籐かごへ移す。絹ものをしぼる勇気はない。
「ある程度踏んだら、様子を見てください。綺麗になってるなと思ったら、しぼってこっちのたらいへ。泡が立たなくなったらせっけんを足して。絹と毛織ものは、縮んだり破けたりしますから、せっけん液のなかで軽く押すくらいでいいです。それに絶対にしぼらないで」
ランスさんは神妙な顔で頷く。
毛織のローブも同じようにした。よし。これでいい。
自前のたらいを回収し、かりもののたらいはすすいだ。洗い上がった洗濯もののはいった籐かごを持つ。ランスさんは、丁寧な手付きで綿のスリップをしぼっていた。
「全部洗ったら、ゆすぎはぬるめのお湯でしてください。絹と毛織ものは温度が低いほうがいいです」
「うん……ありがとう、マオ」
「いえ。じゃあ俺、これ提出してきます」
ランスさんは俺の目を見て頷き、俺も頷きを返して、試験官のもとへと歩いていった。




