2022
ランティエーナ・ルカッツェ、通称ランスは、邪魔っ気な剣を帯からぬいてその辺に置き、渋い顔で作業をしていた。
ランスは、去年、入山試験の最終年だった。最後の年でも巧くいかず、結局こうして、奉公の試験に縋りついている。御山にはいることは彼女の一番大きな望みであり、夢であった。入山を果たし、故郷に錦を飾る。それだけが彼女の目標なのだ。
ランスは最後の入山試験が失敗に終わった直後、井で職業を宣言した。もはや、御山での宣言という栄誉に浴することはできない。ならば一刻もはやく宣言し、等級を増やし、奉公の可能性に賭けるべきだ、と思ったのだ。
ランスはそこまでめずらしくもないが、ありふれている訳ではない、騎馬武者になった。動物や動くものにのっていると、体力魔力ともに向上するが、それ以外に職業加護はない。
ただランスは、幼い頃にそれを選ぶと決めてから、ラシェジルでもトゥアフェーノでも、なんでものりこなせるよう、鍛錬してきた。だから、騎馬武者の職業加護を十二分に活用できる。それは自信につながった。今であれば、入山もかなったかもしれない、と。
奉公人と云っても、仕事は多岐に渡る。
この一年ランスは、傭兵として依頼をこなしながら、かつて奉公人をしていた、という人物をさがしてきた。
レントのような大きな都市から、ロアの田舎村に至るまで、各地にそういう人物は居て、ランスに会ってくれるのはその三分の一くらいだった。三分の二は、御山でのことは話したくないと、ランスに限らず御山のことを訊いてくる人間を避ける。
会ってくれたひとは、ランスに教えてくれた。奉公、下働き、といっても、仕事はひとつではない。家政婦のような、入山者達の身のまわりの世話をする者も居れば、私兵として御山の警護にあたる者も居る。
私兵、のほうならば、芽があるかもしれない。ランスはそう思った。自分は戦えるという自負がある。それに、家事は学んでいない。
大体、家政婦だのなんだのは、能力値の低い、ほかにできることのない人間が、口を糊する為に仕方なくやることだ。娼妓よりはましという程度で、仕事としては最下層だとランスは思っている。それをしたくない。
自分は誇り高い、能力的に優れた人間なのだ。誰にだってできる、料理だの、洗濯だの、そんなものはしない。する必要もない。ランスが護衛仕事をこなして稼いだ金の十分の一も、家政婦達は稼げないのだ。些少な金でひとの下着まで洗わないといけないなんて、死んでもごめんである。




