表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2131/6894

2021


「入山者というのは」

 試験監督は滔々と語る。「まだ幼い。炊事ができない、洗濯ができない、掃除ができない。そう云った子は多い。それにできたとしても、学生達はやることが多く、手がまわらない。だから御山(おんやま)では、家事全般を多くの奉公人がうけもつことによって、学生の負担を減らしている。勿論、わたし達も大いに助かっている」

 カンナさんの隣の試験官が軽く手をあげた。

「ガロア先生、わたし達家政職の人間も手をかしていますよ」

「ああ、そうでした、ジアー先生。勿論、家政職の先生がた、家政職の学生は、授業の一環として雑事をこなしてくれています。ありがたいですよ」

 ジアー先生はこっくり頷く。

「先に云っておきますが、家政取締役のジアー・シラース先生は、奉公人をまとめる立場のかたです。君達が奉公人になれば、彼の許で働くことになるので、覚えておくように」

 受験者達が一斉に宜しくお願いしますと云う。俺はワンテンポ遅れた。ジアー・シラース先生は、年齢のよく解らない、黒に近い紫のまっすぐな髪を、ひきずるくらいに長く伸ばした、シアイル系っぽい男性だ。

 試験監督が咳払いする。

「今回、御山(おんやま)が必要としている奉公人は、家事の手際のよい者だ。なので、これから、洗濯をしてもらう」

 溜め息が複数聴こえてきた。俺は内心、大喜びである。そりゃ、家政職のひとに比べたら劣るだろうが、洗濯をすることはできる。それにどうやら、料理とかそっち方面も審査基準に関わりありそうだし、これは運がいいぞ。

 わくわくしていたのだが、俺は重大なことを忘れていた。「勿論、特殊能力や魔法の使用はゆるされている。思う存分力をふるってください」


 大きなたらいと、洗濯ものの詰まった籐かごが、大勢のひと達の手で運びこまれた。

 このひと達が下働きなのかな? 全員、黒っぽい、裄も丈も足りていないローブを羽織って、俯きがちにたらいと籐かごを運びこんでくる。先生達のローブは、ひとによってはひきずる丈なのだが、奉公人っぽいひと達のローブは太腿丈だった。ちょっと長いはっぴという感じ。

 受験者達は間隔を持って配置され、それぞれの前にたらいと籐かごが置かれた。チハル先生の傍に小さなテーブルが運ばれ、その上に羊皮紙とインクつぼ、ペンが置かれた。記録係はチハル先生のようだ。

 カンナ先生が受験者達の間を縫い、なにか(たし)かめていた。不正がないかをあらためているのかもしれない。なにも不備はなかったみたいで、弾むあしどりでもとの位置へ戻っていった。

 奉公人と覚しいひと達が出ていった。

 俺はとりあえず、ローブを脱いで収納し、ずぼんの裾をまくりあげる。熱魔法も水魔法も持たない俺には不利だが、こうなったらやるしかない。帰還への手がかりがかかっているかもしれないのだ。

 それに御山(おんやま)に這入りこめたら、誰はばかることなくほーじくんと会える。

「始めてください」

 試験官の誰かが云い、俺はくつを脱いだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ