2020
意識を失った失格者もひきずり出され、あしが凍ったふたりは私兵が地面との接合を砕き、外へつれだした。心配だけれど、治療はうけられるだろう。暴れた結果の自業自得、でもあるし、あんまり同情はできない。
大体、天下の御山の先生達相手に、むちゃくちゃするほうが問題である。それにここは御山の敷地だし、退去を命じられたら退去するのがすじだろう。
そう云った騒動があったものの、受験者達がそわそわすることはなかった。なんたって、人生のかかった試験なのである。いつ行われるか解らないということはつまり、今後一切行われない可能性だってある訳で、だから皆さん、他人がちょっと暴れたくらいで動じない。
俺は凄く動揺してるけどな。あー、こわかった。だって、自分の五割増しくらい体重があるだろう大柄な男に、掴みかかられそうになってみろって。すっごくこわいから。まじで。
試験官達はなんだか楽しげに談笑している。
「いやあ、衰えてませんね、ガロア先生」
「いやいや、わたしがなにもしなかったら、シシース先生が暴れていたでしょう? ああ、チハル先生、君の魔法は素晴らしかったよ」
「光栄です。ガロア先生、補血剤を持ってくるよう命ぜられては?」
「そうだね。誰か、ダーニェア先生に補血剤を」
「甘いやつで頼むよ、でないとダーニェア先生はむずかるんでね」
「いやだなあジアー先生、ジアー先生が服ませてくれるんなら僕はなんでもいいですよ」
「じゃあベリャックの毒をもらおうか?」
「それはご勘弁を!」
はっはっは、と皆さん楽しそうである。うわー、感覚が解らない。やばいひと達だ。三人でかーるく五人を戦闘不能に追い込んだんだもの、まじでやばい。
補血剤がほんとに運ばれてきて、シニヨンの証人・ダーニェア先生がそれを服んだ。なかなかまずいしろものらしい。しかめっ面になる。
お薬の壜が片付けられて(試験官のひとりが還元した!)、試験監督が注目を集める為か、軽く手を打ち鳴らした。
「いや、すまなかったね、諸君。毎回ああいった不心得者はあらわれる。もし、君達のなかから合格者が出れば、次の試験ではああいった輩をさばくのを頼むかもしれないから、その予習だと思ってくれ給え」
なかなかに感じのいい口上で、受験者達はちょっと笑った。俺もだ。試験監督は満足げに頷く。
「それでは、実際の試験にはいろうか。今回は簡単だ。審査はふたつ。ひとつ目は洗濯だ」
洗濯?




