2018
受験者達はしわぶきひとつもらさない。というか、名前を呼ばれたひとは、身動きさえできないみたいに茫然としている。俺の隣の屈強なおにいさんも、名前を呼ばれていた。ショックだったみたいで、顔がまっさおになっている。
きょろきょろしていた俺は、試験監督の声で正面に向き直った。
「五名は今後四年間、御山に近付くことを禁じます。証人を立てた正式な誓いである以上、破らせはしない。西の二の門に近付いただけでも警邏隊に捕らえさせるから、そう思って行動するように」
試験監督は淡々と、そう云う。俺はぽかんとしていた。
名前を呼ばれた五人は動揺が激しく、三人はその場にへたり込み、残りのふたりは震える声で抗議した。
「待ってください、納得いきません」
「そんな……こんなばかなことありませんよ」
「ばかなこと?」
チハル先生がくすっとした。「それはこちらのせりふですね。表象者に頼んでも、贋作家につくらせても、天の実見者であれば真贋は見抜けます。手落ちのないように、ふたりで確認していますし。ですよね、カンナ先生」
「はい」
笑顔のチハル先生に、カンナ先生はやはり笑顔で頷いて、出入り口を示す。
「どうぞ、あなたがたがここに居座る権利はありませんので、出ていってください」
表象者ってなに? 贋作家って? そんで、実見者って色々ある訳? 天の実見者ってなんだよ。
知らない単語や解らない言葉に混乱する俺を、ちょっと離れたところに居る若い女性が指さした。名前を呼ばれていたひとだ。
「だったら、あのーーだってつまみだすべきですわ! あのような者がどうして補助教官や次席下山者から推薦をもらえるんですか! もしもらえたとしても寝室での働きに対してでしょう! 御山では奉公人にそのような仕事もさせるのですか!?」
だから、そういう言葉は云わないほうがいいって。云ったひとの品性が疑われるだけだからね。
あと、セロベルさんやファルさま達をばかにされたので、気分が悪い。セロベルさんはリエナさん一筋なんだぞ。初対面の時からかってきたけど、あれは俺を追い払う為のポーズだ。そんなんなんぼ鈍い俺だって解るわ。
それに、ファルさまにはエヴィさんが居る。放っておくとエヴィさんの手がおいしい話を延々してくるのである。俺に興味示したことはないし、ありえないっつうの。
自分が試験をうけられないみたいだから、誰か道連れにしてやろう、って気持ちなのかな。そういうひとは一生うからないと思う。不愉快だ。




