2017
試験官三人の手を介し、カンナさんが能力証の束をうけとった。カンナさんの片眼鏡は銀縁で、悲嘆木の葉を模した飾りがついている。薬材採集で枝をとりまくったことがあるので、解った。ちょっとオリーブに似た葉だ。かなり丁寧な細工だし、本物の銀だから、相当お高いだろうな、とどうでもいいことを考える。
カンナさんは一度頷いてから、左腕を曲げて多いほうの束をのせる。それから、左手で少ないほうの束を持ち、右手でぺらぺらとめくる。二回やって、少ないほうの束を、隣の試験官へ渡す。隣の試験官は、更に隣の試験官へそれを渡す。
それからカンナさんは、多いほうの束をめくって眺める。眺める、という感じだ。なにか確認しているにしては、一枚々々を見る時間が余りにも短い。
やはり二回、眺めて、カンナさんはそれも隣の試験官へ渡した。今度は、隣の試験官がその束を持ち続ける。
「うん」カンナさんはにっこりした。「チハル先生と同じです。異論はありません」
「そうですか。では、読み上げてください」
「はい」
少ないほうの束を持っている試験官が、束に目を落とす。
「ルミ・ヴェルグランティズ、サイディル・アマアレッカ、レイヴォ・ファッサンド、アウサーロティエナ・ナムラ、アルルシェプ・フィンシー。以上五名です」
「今、名前を呼ばれた者は、出ていくように」
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なにが起こっているのか理解できない。どういうこと? 能力証……じゃなくて、推薦状だったのかな、あれ。
推薦状が偽ものだったから、はじかれたってこと? でも、どうして偽ものだって解るんだろう。
あ、もしかして、チハル先生とカンナ先生は筆跡鑑定ができるのかな。さっき、俺がセロベルさんにもらった推薦状も、ほんものかどうか慥かめてたし。
セロベルさんは補助教員してたから、筆跡のサンプルは沢山ある。それに、カンナさんはセロベルさんと同期入山で、一緒に御山に就職した訳だし、セロベルさんの筆跡は解っているだろう。
あれ? でも、だとしても、比較対象がないと意味がないってことじゃん。
御山のひとが、推薦状を書いたひと全員の筆跡を知ってはいないだろう。
大体、奉公の試験は突然始まる。そこに持ってきた推薦状を書いたひとに、これを書きましたか、なんて確認をとる時間も、比較対象の筆跡を送らせる時間もない。
それに、代筆ってことだってある。実際、セロベルさんに書いてもらった推薦状も、一部のひとは代筆だ。




