2015
どうやら、六人居る試験官達で、左から二番目のひとが一番偉いらしい。というか、試験監督ってやつだ。そのひとが名簿らしきものを開いて、喋っている。
「名前を呼ばれたら返事をするように。リアミネカ・ファータサール」
「はい!」
はなれたところから、元気のいい返事がある。試験官達は特に反応しないが、俺はちょっと吃驚した。
「ランティエーナ・ルカッツェ」
「はい」
「ロアネス・ヴィグラ」
「はい」
「ルーシェフェン・クー」
「はい!」
「ル……ルミ・ヴィルグランティズ」
「はい」
そんな調子で、約三十人くらいの名前が読み上げられた。勿論俺の名前も呼ばれる。ただ、ひとりだけ後から来たからか、一番最後だった。それに、名簿に載っていないのだろう、閉じてから呼ばれた。名前自体は、推薦状で把握したんだろうな。
「マオ・クニタチ」
「あい」
大事なところで嚙むのが俺の常である。案の定だ。痛いしはずかしいし、しかも受験者達にくすくす笑われた。ぐぐぐ。
試験官達はしかし、俺が多少嚙んだくらいでは動じない。名簿が私兵の手に渡り、天幕から持ち出された。代わりに、能力証と思しい羊皮紙の束が持ちこまれる。試験監督はそれをうけとり、はっきりと大きな声で云った。
「ここにあるのは、諸君らのうち、能力証を提出した者の能力証だ。能力証の提出は任意であり、提出の際に君達は様々な規約に目を通し、書類をつくり、署名した。そうだね?」
複数人がはいと返事する。結構な人数が能力証を提出しているようなので、俺はちょっと不安になってきた。だって、それだけのひとが、自分の能力値なり特殊能力なり、つかえる魔法なりに自信があるってことだろ。しかも、能力証によってそれが担保されてる。
かたや、能力証なんて絶対にとれない魔王である。どう考えても分が悪い。
「その書類には、能力証や推薦状など、提出した書類に偽りがあれば、今後四年間入山試験にも奉公の試験にも応募不可であると書いてあった。それは証人を立てた正式な誓いであり、破ることはゆるされない。今この場に立っている者であれば、それは理解できていると思う」
試験監督はこほんと咳払いする。「失礼、今この場に居る者ならば、理解していることと思う」
座っている試験官さんへの配慮かな。多分。
受験者達は同意を示す為か、頷いたり、はい、と返事したりした。それは、能力証を提出していないひとも。推薦状の提出、書類書かなかったけど、いいのかなあ。




