2014
ぎくりとした。
カンナさんはにこにこしている。俺は目を逸らす。やばい。まずいぞ。「あー、えっと……提出しないといけないんですか?」
「いえ」
ぐいと目を戻した。え?
カンナさんは小首を傾げる。
「どうかしました?」
「え……っと、いいんですか、提出しなくても」
「はい。自由です」
カンナさんは頷く。「不名誉職であることをいやがるひとも居ますし、能力証は凄く個人的な情報が詰まっているものなので、提出は任意です」
そうなんだ。あー、ほっとした。
俺は数回、小さく頷いた。
「えっと、提出しません」
「そうですか。じゃ、行きましょう。やー、楽で助かります」
「らく?」
「能力証の提出って、色々手続きがあって、書類も書かないといけないし……要するに、ちょっと手間なの」
カンナさんは豪快に笑った。
天幕のまわりには、私兵が沢山居た。みんな、カンナさんにお辞儀し、カンナさんも会釈を返す。
天幕の一部がまくれ上がっている。そこが、試験会場への入り口だった。
カンナさんの先導で這入る。「カンナ・ウィグレス、戻りました。こちらは、もと補助教官と、次席下山者に推薦されたかたです」
なかに居るひと達が一斉にこちらを見た。
おそらく試験官だろう、カンナさんと同じ青いローブのひと達は、興味深そうに。その向かいに居る、年齢も格好も様々なひと達は、訝しげに。俺と同じく、下働きの試験をうけに来たひと達、だろうな。
髪が短くてピアスもしていない、ラフな格好の男が、もと・補助教官と次席下山者に推薦されているなんて、意味が解らない。受験者達はそういう顔をしている。
俺はどちらにも、軽くお辞儀した。カンナさんに促され、受験者の列にまざる。隣になった、屈強な男性と帯剣した女性が、いやそうな顔をした。
カンナさんは、セロベルさんから推薦状を預かっていたみたいで、一番手前の試験官にそれを渡した。それから、自分も試験官の列に並ぶ。
推薦状は暫く試験官達の手を渡り、カンナさんから一番離れたところに居る、ひとりだけ椅子に座っている試験官に辿りついた。青い髪をポニーテールにしている、若い男性だ。椅子には杖が立てかけられている。
椅子の試験官は、推薦状を両手で持ってちょっと眺めると、隣の試験官に返した。「本ものです」
「よし。それでは、試験を始めましょう」
推薦状は結局、控えていた私兵の手に渡った。目でその行方を追っていた俺は、試験官の声で我に返る。
「では、名前の確認を。それが終わったら、能力証の精査です」
精査?




