2013
バルドさんとヨーくんも追いついた。ふたりとも息を切らしている。俺は額から目をはなし、収納空間へ手をつっこむ。
「どうぞ」
「ああ、ありがとうマオ」
「ありがとうございます」
とりだしたタオルを渡すと、ふたりとも顔の汗を拭う。ゴブレットとお水も出した。
「うん」カンナさんが満足そうに頷いた。「いいね」
「だろ。こいつ、根性あるし、なんとかなると思うぜ」
セロベルさんが同調する。カンナさんはにこっとした。
「そりゃあセロベルのとこで働いてるんだもの、根性ないと無理でしょ」
「あのな、下山してからも御山みたいにしてると思ってるんなら」
「冗談でしょ、ほんとに堅苦しい」
カンナさんは澄まし顔で、セロベルさんは渋面、後、微笑み。同期入山って、こんなふうに仲好しになるものなんだな。
「会場はこっち」
カンナさんが門を潜った。俺も続く。が、セロベルさんと、バルドさんヨーくんは、門のこちら側へは来ない。たちどまり、振り返る。「セロベルさん?」
「俺達はここまでだ。試験、頑張れよ」
セロベルさんは片手をあげてそう云い、バルドさんとヨーくんが手を振ってくれた。
「マオ、君には開拓者がついているよ」
「絶対巧く行きますよ!」
「今夜はお祝いのご飯を一緒させてもらうからね」
俺は頷いて、あしばやにカンナさんを追った。泣きそうだったから。
カンナさんに並んだ。カンナさんが俺を見る。俺よりも15cmくらい小さいので、こちらを見上げる格好になる。三十歳前後、かな。多分。
「マオさん、好かれてますね」
「あ、……ですかね?」
「セロベルが、髪の短い男のひとに、すっごく優しいのだもの。吃驚しました」
単純に、驚いた、という意味だけのようだ。髪が短い男に対しての、侮蔑のようなものは、感じられない。御山はそうなのかもな。差別は厳に禁じられている。だから、獣人でも過ごしやすい、と聴いた。
カンナさんはくるっとまわった。ドレスの裾がふわっとひろがる。「セロベルが太鼓判押してるなら、試験免除でもいいくらいなんだけど。あの子、奉公人に対して優しかったもの、それが勧めるんだから……」
なんだか、こわい。前々からだけど、奉公ってなにか、よっぽど大変なんだろうか。根性と忍耐力さえあれば大丈夫、みたいに、入山経験者はかならず云うんだけど……。
カンナさんがすいっと前方を示した。天幕が張られている。運動会の放送席、を思い出した。
「あのなかです。能力証は提出しますか?」




