2009
レントのなかにいる、伝糸持ちの警邏隊から、バルドさん達に連絡があった。そういうこと。
馬車が停まり、俺はバルドさんにひっぱられて降りた。すぐに、ひょいと負ぶわれる。バルドさんは東門を顔パスで通った。負ぶわれている俺もだ。出る時にあしどめされたのは、スルくんが居たから、かなあ。捕まったグラーディアール卿の子どもだから、疑われたり、なにか書類が必要だったり、したのかも。
バルドさんは休まずに走る。中央を越えて、西に這入ると、行列が見えた。例の、やたら間隔を開けている行列だ。鐘が散発的に鳴っている。
バルドさんが俺をおろし、並んで最後尾につけた。「セロベル達に連絡をとっている。安心して」
「はい」
下働きでもなんでも、御山にはいるのは至難のことなのだ。だから、試験をうける同士で、試験前に潰し合い、は、ある。だから皆さん、護衛っぽいひとを数人つれていたり、当人がものものしく武装していたりする。
よなかに不意打ちで試験があった時は、みんな寝間着みたいな格好だったし、護衛もそんなに居なかったけれど……今は雰囲気が違った。
お昼に試験って、俺がレントに来てから初めてかもな。多分。
列の動きはいつにも増して、不規則だ。初めのうちはかなりの速度ですすんでいたのに、ぴたっと停まったと思ったら、五分くらいなにもない。
前に進み、停まる。それをくりかえす。暫くするとセロベルさんと、ヨーくんが走ってきた。セロベルさんは俺の前で停まり、手をさしだす。「推薦状」
「あ、はい」
収納していた推薦状をとりだす。セロベルさんはそれをひったくって、西門方向へと走っていった。あし、はやいな。
ヨーくんが息を切らしている。
「お、お疲れさまです、バルドさん」
「ああ、大丈夫かい、ヨー」
ヨーくんは頷いて、にこっとした。「ちゃんと武器も持ってます。マオさんをまもれますよ」
じりじりと、いつ締め切られるのかと怯えながら、待っている。
セロベルさんが戻ってきた。うすい青のローブを着た、紫色の髪の女性と一緒だ。知り合いらしく、親しげに言葉を交わしている。「あ? あいつ、辞めたのか」
「あら、誰もあなたに伝えなかったのね。そうなの、家庭にはいるんですって。奥さんは耕作人だそうよ」
「女は学問するななんて云って、お前と大喧嘩になった、あいつが」
「そう。おかしな話があるものでしょ」
くすくす笑っている。「人間、かわればかわるものだわ」
「それにしたって、かわりすぎだろ」
「あなただってかわったじゃない。警邏隊やってたかと思えば、観光案内で二冠のお宿のご亭主なんだもの」




