2007
ハイキング、っていうのかな、こういうの。それともピクニック?
途中、疲れた俺は、徐々に集団からはなれはじめた。サキくんが気付いてひき返してくる。「どうぞ」
「ありがと」
さしのべられた手を掴む。サキくんは嬉しそうに見えた。頼られるのが嬉しいのだと思う。
「ここには、いい思い出ばかりだなあ」
「うん?」
「マオさんとふたりで、薬材採集に来たり……コマちゃんと出会ったのもここでしたよね」
「ああ、そうだったね」
「彼女、今頃ロアかな。ルッケンレーネは世界中を興行してまわっていますから。あの調子で、友達とお菓子を食べているかも」
「四月の雨亭の宣伝してくれてるかな」
サキくんが笑い、俺も笑った。
丘のてっぺんを通りすぎ、反対へ降りる。傾斜はゆるいけれど、のぼりよりもくだりがきつい。泉の近辺では、調剤士や錬金術士がお薬をつくっているらしく、もくもくと煙がたちのぼっていた。
東門であしどめされた時間が長かったので、もうお昼を過ぎている。先頭のマイファレット嬢が振り向いた。「降りたらお昼にいたしましょう」
「やったですっ」
マルロさんがはしゃぐ。
「あ、ツィークくんにお弁当渡してなかった」
「わたしが配達してくるよ」
和やかな雰囲気だ。とても気分がいい。とても。
泉の傍についた。かちゃかちゃと、調剤器具の音がする。いい香りのする薪が焚かれていた。四月の雨亭でつかっているのとは違って、細い枝ばかりだ。なにかしら、調剤結果に関わることなのだろう。
リッターくんとサキくんが、泉の水を掬って飲んだ。「マオさん、ここなら宜しいのではありません?」
「ああ、いいですね」
マイファレット嬢が示した場所に、じゅうたんを敷いた。座って、お弁当や、水差し、ゴブレット、フォークなどを並べる。スルくんが手伝ってくれた。籐かごにたっぷりはいったサンドウィッチや、幾つもの折り箱に詰められたとんからに、目をまるくしている。
もしかしたら、お弁当に慣れていないのかな。貴族だし、こうやってピクニックに来ても、現場で調理してもらうのが普通だったりして。
「あ、こんにちは」
「ああ、お久し振りです」
お水を汲みに来たひとに、なんだか見覚えがあって、やっと思い出した。苦役の草原で何度か一緒になった、薬材採取士さんだ。じゅうたんを見て、くすっとする。
「薬材採集じゃ、ないみたいですね」
「はい。ちょっと、お出掛けです」
なんとなく、薬材についてお喋りした。その間も、あちらはお水を汲んでいるし、俺は食卓を整えている。




