2006
第二の丘は、昼間だからか、傭兵や警邏隊の姿が散見された。薬材採集をしていると思しいひと達も居る。そのなかに、薬材採集の折りにたまに行き会うひと達が居て、お互いに目礼した。
薬材採集を生業としているひと達は、競合相手、という感じではなく、お仲間、だ。向こうもそう思ってくれている。だから、どこにいい薬材があるとか、この工房なら高くひきとってくれるとか、そういう情報を共有することは多々あった。
マイファレット嬢がぐいっと伸びをした。サイレくんがびくつく。
「ああ、いいお天気ですわね。昨日の雨が嘘のようですわ」
「少し歩きますか、ロヴィオダーリ卿」
「ああ……」
スルくんがリッターくんに肩をかす。先に出発したリッターくん達が東門であしどめされていたので、結局二台の馬車は、ほとんど同時に第二の丘に辿りついたのだ。俺達よりも長時間、馬車のなかに閉じこめられていたリッターくん達は、体を解したいらしい。
俺は丘の上を示す。体が巧く動かない。馬車はやっぱり、いろんなとこが痛くなるな。
「ここをのぼって、反対側へ下ったら、泉があるよ。ちょっとかなくさいけど、よく冷えてて、おいしいお水がわいてる」
「そこまで行けそう? リッター」
サキくんが朗らかに訊くと、リッターくんはこくんと頷く。たまに、子どもらしい動きをするので、リッターくんは可愛い。
マイファレット嬢がにっこりした。「では、そちらまで参りましょう。スルさま、疲れたらわたくしがかわります」
「ええ、ありがとうございます、マイファレット嬢」
マルロさん達にも説明し、馬車を見張るツィークくんを残して、俺達は丘を登りはじめる。
風が気持ちいいし、やわらかい草を踏んで歩くと、青い香りがするのが好もしい。草の香り、好き。
バルドさんとマルロさんは、たまにちょっと速度をゆるめる。伝糸で連絡がはいってくるのだ。その都度、ふたりのどちらかが、伝糸でどこかへなにか伝えていた。
お仕事の邪魔をしてしまったかな、と申し訳ないとともに、リッターくんやマイファレット嬢の気分転換なんだし、仕方ないよな、とも思う。
サイレくんは、頑張ってマイファレット嬢に近付こうとしている。なにか話しかけて居るみたいだけれど、距離があるので俺には聴こえない。サキくんがスルくんをからかっているのは聴こえた。「スル、君はとても可愛いね。小鳥みたいだ」
スルくんが赤くなってなにか云うと、サキくんは機嫌よく応じた。
「サキでいいよ。僕は家名をなのれるような立派な人間じゃない」




