表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2114/6895

2005


「なんだったんですか、用事は」

 馬車が動き出すと、隣に座ったサキくんが云った。俺は微笑んで頷く。マルロさんは御者で、サイレくんも御者だ。トゥアフェーノにひかせるので、サイレくんが御者をしたがったのだ。マイファレット嬢とお出掛け、という緊張を、普段からよくやっている御者でごまかそうということらしい。

 席は向かい合って、四人掛けなのに、サキくんは俺の隣を選んだ。まだ、ちょっと機嫌がよくないみたい。なんとなく、解る。この子は自分の気持ちを表に出すのが苦手だ。ジーナちゃんやリッターくん以上に。

 サキくんに凭れかかった。「野暮用」

「野暮用?」

 サキくんの腕が、俺の腰にまわる。俺は目を瞑る。のりものでは酔うので、こうやっていると楽だ。

「謝罪できるひとって素敵だよね」

 というか、違うかな。なんだろう。素敵というか、自分が価値のある人間だと思えてるよね。

 アフィテルディとかアデイールみたいなやつらって、本当の意味では自分に価値がないと思ってるんじゃないかな。だから、逆に、ひとをおさえつけて踏みつけにしてばかにして、それを自分の価値にしようとしてる。自分はゼロだけど相手はマイナスだから自分のほうが上、みたいな、くそみたいな価値観だ。


 考えていると胸がむかついてきた。俺は目をうっすら開けて、なにかほかのことを考えようとする。

 サキくんの体温は、ほーじくん程高くはないな、と思った。やっぱり、鳥っぽいひと達とか、犬っぽいひと達とかは、単なる人間とは代謝が違うのかもしれない。一緒に暮らすとしたら、お部屋とかお風呂の温度で、もめそう。

「じゃあ、僕は素敵じゃないかな」

「うん?」

 我に返った。なんか、眠たいな。馬車はいいものなのか、サイレくんが巧くコントロ-ルしているのか、酷く揺れる感じはない。酔わずにすみそうだ。

 サキくんの腕が上がってきて、抱き寄せられた。サキくんは、なんだか泣きそうな顔をしている。

「子どもみたいに、リッターやあの……彼に、つっかかって、ばかですよね」

「サキくん」

「僕ってどうしてこうなんだろう。マオさんに対してしか素直になれない。マオさんにならなんだって云えるのに」

 俺は手を、サキくんの頭に置いた。軽く撫でる。「サキくんは、いい子だってば」

 そうやってなやむのは、みんなそうなんだよ。俺はなんにもなかったけど、そんなもんなんだって。

「サキくんはみんなに好かれてるよ。それに、みんな、サキくんが素直じゃなくても嫌いにならないよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ