2002
「君は彼の性格を理解してないね」
ちょいと頬をつつかれた。子どもにするような仕種だが、いやな感じはしない。マイレさんは、なんとなく、お兄さんっぽい雰囲気なのだ。
「テイズは仕事に対して真摯だ。自分ひとりが見張っていた訳じゃないのに、複数の咎人を逃がしてしまったこと、その際に、真面目に労役をこなしている者達のなかから怪我人を出してしまったこと……その上、鉱山とはまったく関わりのない、近くの村のひとが怪我してしまったことが、ゆるせなかった」
「怪我」
「村を襲って、衣装やなにかを盗んでいったんだよ」
溜め息が出る。なんとも、愚かな話で。
この世界には、質問にたいして神さまが絶対に正しい答えを教えてくれる、裁定者が居るのだ。鉱山へ送られるくらいの重犯罪ならば、確実に裁定者が質問している。冤罪はありえない。だから、それ相応のことをやってきたひと達が、そこには居る筈なのだ。
でも、その段になっても、自分がしてきたことを悔いない。それが愚かで、言葉もない。その上に脱獄だの窃盗だの、どんどんと罪を重ねていくのだから、一体なにを云ったらいいと云うんだろう。
口を噤んで黙りこむ俺に、マイレさんはふふっと笑った。すぐに笑いをひっこめる。
「ごめん。笑いごとじゃないのにさ。あんまり、滑稽な話だものだから……まあ、鉱山は、上を下への大騒ぎだったんだよ。どうやったのかは知らないけれど、アデイール達は落盤事故を起こして、混乱に乗じて逃げたそうだ。テイズは体力が高いから、怪我をして動けないひと達を負ぶって、外まで運んだんだって。ほかの、護衛をしている咎人や、傭兵と一緒に。癒し手が常駐しているのは近くの村しかないから、傭兵が伝糸で連絡してもあちらから応答がないと云っていたけれど、怪我人を馬車にのせてその村まで。でも、そこがアデイール達に襲撃されていて、伝糸持ち含め村のひと達も怪我をしていたから、大慌てで隣やその隣も村に連絡をとって……」
想像に難くない。落盤事故で怪我人が多数出ているのだ。きっと、大変な状態だったんだろう。
それにしても、落盤事故か。魔法不可領域らしいから、手作業で色々工作したのかな。信じがたい執念だ。そんなことするよりも、普通に勤め上げればいいのに。そりゃ、魔法不可領域は、日常的にばんばん魔法をつかうこちらの世界のひとにしてみたら、本当にいやなことなのかもしれないけどさ。でも、なにかしらの犯罪で捕まってそこに居るんだから、罰としては妥当なのじゃないかな。




