2001
マイレさんが、ぽつぽつ喋ったのは、マイレさんとテイズが事件に関わることになった経緯だった。
「テイズは、傭兵協会所有の鉱山で、警備をしていただろ」
「うん。魔法不可領域なんだよね」
俺が知ったかぶりで云うと、マイレさんは頷く。「体力を向上させたり、魔力を向上させたり……そういう、有用な宝石がとれる鉱山なんだ。ほんのわずかだけれど」
「うん」
「こういうのも縁なのかな。アデイール・ファバーシウスも、そこに居た。鉱夫として」
目を瞠る俺に、マイレさんはくすっとした。
「お互い、面識はないよ。鉱山で初めて顔を合わせた。ラッツァクの事件に関わっていたなんて、テイズは知らない。多分あっちも知らないね。僕は、ウロアに呼ばれて、かなり内密な場で帳簿をつけたりしていたから、名前は知らないけれどアデイールと面識はあった」
頷く。マイレさんは苦笑いだ。
「テイズはあれで、真面目だからさ。きちんと魔物退治をしていたし、鉱夫の安全をまもっていた。仕事はきちんとやるんだよ彼は」
「しってる」
それが悪い方向に働くと面倒だけれど、いい方向だと凄く頼もしい。鉱山の警備なんて大変な仕事だろうし、それを勤め上げたのだから、頑張っていたのはほんとだろう。
マイレさんが溜め息を吐いた。
「アデイールはね。脱走したんだよ。ほかの複数の咎人と一緒に」
吃驚した。声も出ないくらいに吃驚した。脱走って、脱獄じゃん。
は? じゃあ、脱獄してレントに舞い戻ってたってこと?
あっ、だからかあ! 昨日、スルくんとか、警邏隊から事件の経緯について聴いてた時、グラーディアール家に「匿う」ってなに、って、ちょっとだけ頭を掠めたのだ。アデイールが脱獄犯なら話は通る。当然警邏隊がさがしているだろうから、文字通りだもん。
でも、そうかあ、レントへ這入る時の検査って、凄く甘い時があるんだよな。俺もそれですりぬけられたもん。ハーバラムさんというきちんとした商人がつれているから、見逃された。アデイールもそんなふうに、誰かにくっついて這入りこんだんだろう。
マイレさんがくすっとする。でも、あんまり楽しそうではない。「知らなかったんだね」
「うん……誰も教えてくれなかった」
「そりゃあ、君を怒らせたくないもの」
マイレさんは歌うように云って、目を細める。
「守秘義務があるから、テイズは手紙にそのことを書けなくて、僕は暢気に、テイズが戻ったら一緒にレントを出るんだって思ってたんだよ」
「え……でも、労役が終わったら、テイズは関係ないじゃん」




