2000
マイファレット嬢が戻った。俺はサイレくんに、片手剣をひと振り渡した。鎧は着付けていないそうで、厚めのローブにかえただけだ。荒れ地近くでは砂嵐が頻繁に起こるし、村が砂まみれになることもめずらしくない。荒れ地に収穫に出る時も、砂に埋まって出てこられなくなる危険があるので、重たい金属製の鎧は着けないのが普通みたい。皮や布製の鎧と違って、すきまが大きくなりがちだから、そこから砂がはいるのが不快らしい。盾もつかったことはないそう。
バルドさん、それにマルロさんが、前庭側の出入り口から俺達に声をかけた。各所への連絡や調整がすんだので、出発できるのだ。
タグさんとリータちゃんでつくってくれたお弁当を収納し、みんなと一緒に外へ出た。お弁当は、リータちゃんのパンに、タグさんのつくったハムエッグをはさんだサンドウィッチ、クレープにタグさんのつくったジャムをまいたラップサンドウィッチ、とんからと、俺の収納空間なら大丈夫だろうということで、梨のジュースが水差しみっつ分。ゴブレットならいつでも持っている。
護衛だが、マルロさんと、ツィークくんも一緒に来てくれる。頼もしい。お弁当はちゃんと、みんなの分ある。
前庭では、アルラくんとスーロくん、それにもと・南の娼妓達が、楽しそうに草むしりやごみ拾いをしていた。なかには、今日にも秋の娘亭へ行く予定だった子達も居る。リーニくんの精神状態が安定していないので、出発は明日以降に延期になった。でもみんな、表情は明るい。予定が先に伸びただけ、という認識なのだろう。
リーニくんは立ち直る。絶対に。だから俺も、予定が先に伸びただけだと、そう思っておく。
「あ、マオ」
「うん?」
足を停める。スーロくんがにこにこして、通りを指さした。「お客さん」
そちらを見る。門の傍に、マイレさんが佇んでいた。
外まで行くのは馬車だ。だから、通りに馬車が用意してある。二台。
マイレさんと話がある、というと、マルロさんとサキくん、サイレくんを残し、リッターくん達は片方の馬車にのりこんで、先に出発した。
マルロさん達は、通りに出て、俺達から少し離れたところに居る。俺はマイレさんと隣り合って、門に寄りかかっていた。四月の雨亭の建物が見える。
「どうしたの?」
「うん。君に色々と、説明しなきゃなって、思ってね。あとは、謝罪だよ」
マイレさんへ顔を向ける。マイレさんは、自分のくつの爪先を見ていた。「君に対して酷いことを云った」
「そんな……」
「いや、謝らせてほしいんだ。ごめん。本当に」
マイレさんの声は穏やかだ。俺はちょっと考える。
「うん。解った。ゆるしてあげる」
「君にはかなわないな」
マイレさんは何故だか嬉しそうにそう云った。




