1998
「俺、もっと天意落掌、巧くつかえるようになりたいな」
マイファレット嬢が、薪運びを手伝ってくる、と出ていった後、サイレくんがぼそっと云った。どさくさに紛れて、サイレくんも一緒に行くことは説明したので、俺は満足している。マイファレット嬢は、サイレくんが一緒に来ると聴くと、楽しみですわ、と笑っていた。サイレくんも、そう云われてしまったら、断れないみたい。可愛いことである。
サイレくんを仰ぐ。裾野、特に荒れ地近くの村のひと達は、総じて背が高い。ダストくんも背が高くてがっしりしてるし、シアナンさんなんて、セロベルさん並みに背が高いし。……あ、ナジさんは別ね。
「どうしたの。突然やる気だね」
「だって。耕作人って、畑を耕したり、肥料をつくったり、する職業だろ。俺達の村は、あんまりそう云うのやらないから解んないけど、畑仕事って、天気は重要って聴くから」
あ、そっか。
サイレくんはもごもごと云う。額の汗を拭う。「俺の天意落掌がもっと役に立ったら、もしかしたら、ほら、さあ」
「一緒にお仕事できるかもしれない、よね?」
俺の言葉に、サイレくんは口をぱくぱくさせた。
サキくんとスルくん、そしてリッターくんが、装備を整えてやってきた。
リッターくんは、俺の提供した服と、セロベルさんからかりた皮の胸当てに、片手剣。いつもはもっと重たい剣をつかっているけれど、今日はまだ本調子ではないので、軽めのもの。といっても、俺は片手で扱えない。両手でも無理かなあ。剣って、長いから、単に重たいものを持つのとは勝手が違うんだよね。槍になるともっと無理だろうな。
後のふたりも、リッターくんと同じような皮の胸当てをしている。サキくんは昨日、杖を持っていたのだが、グラーディアール邸で紛失したそうだ。
慥かに、来た時には持っていた気がするけれど、馬車のなかではなにも持っていなかった。リッターくんが歩くのを支える為に、杖をどこかに置いてしまったみたい。だから、俺が杖を提供した。しっかりした樫の木製で、魔力をわずかに向上させるとともに、殴打にもつかえるやつ。あげるというと、気にいってくれたみたいで、サキくんは喜んだ。
スルくんが持っているのは、俺が昨日あげた、剣と盾だ。いい盾ですよ、と、今日も云っていた。
三人にも、サイレくんも同行すると伝える。リッターくんは無表情に頷いて、スルくんはかしこまってお辞儀する。サキくんがにこやかに云った。
「宜しく、サイレ。どんな魔法をつかえるか、どれくらい戦えるか、訊いてもいいかな?」
「あ、はい」




