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1995


「言葉通りです。実は、入山後に、学長からお話がありましたの」

 ほう。

 きょとんとしている俺に、マイファレット嬢はなんだかとても、不安そうに説明する。

 入山直後、マイファレット嬢含め、複数の学生が、学長から呼び出されたらしい。

 呼び出された学生は、試験をうけた時とは大きく環境がかわった子達だ。家や国の都合で、試験時とは所属する地域が違う……ということ。マイファレット家だけでなく、信仰告白だとか、国にたてついたとかで、亡命したり国外退去になった家は沢山あるのだ。

 入山試験には、願書を出す訳だけれど、そこには適職と志望の職業を書く。志望の職業は書かなくてもいいらしいけど、大概は書く。ジーナちゃんは書いてなかったけどね。

 で、志望の職業というのは、ほかのデータと一緒に御山(おんやま)で厳正に管理されている。そして、大概の学生が、入山試験時に志望した職業に就く。ただ、御山(おんやま)に申し出れば、志望の職業は簡単にかえられるのだ。試験時に志望した職業に就く学生が多いのは、単に、適職のなかで一番有用で、当人が一番なりたいものを選んでいるからだろう。特殊能力との兼ね合いを考えたり、占ってもらったりして決めるものだそうだ。


 学長は、暮らしている場所がかわった学生には特に、「試験時に志望した職業とは違う職業に就くことも可能である」と伝える、のだそう。当人ではなく国の意向で、職業が決められていることがあるから、だ。

 マイファレット嬢もそうだったけれど、ディファーズに生まれ育ったら、適職に癒し手がある場合ほぼ確定で癒し手になる。そうしないと、神聖公へ反意ありと思われて、迫害されるからな。実際、ルッタさんのお姉さんも、癒し手になるのを拒否して、一家まるごと亡命した。まだ会っていないけれど、オオウチ・レンさんも、癒しの力があるのに癒し手ではない、と難癖をつけられて、亡命せざるを得なかったみたいだし。

 例外は、適職に祇畏士や神おろしもある場合だ。そういう場合だけ、選択肢が増える。まあ、癒し手か祇畏士か神おろしか、の三択もしくは二択だけどさ。ディファーズは職業の選択に関して、まじで自由がない。

 マイファレット嬢は、癒し手にしか適職がないように俺は記憶していたけれど、本当は違うそうだ。ほかにも適職があって、でもそれは父親と一番上のお兄さんしか知らないことだった。マイファレット嬢自身は、どうせ癒し手になるのだし、関係ないと思っていたみたい。


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